都心と羽田空港などを結ぶリムジンバスを運行する東京空港交通は11月24日、CYBERDYNE(サイバーダイン、7779)が開発したロボットスーツ「HAL」の本格導入を開始した。羽田空港のバス乗り場で、荷物の積み込みなどを担当する旅客係員が着用する。
腰への負担軽減
東京空港交通が導入したロボットスーツは、サイバーダインが開発した「HAL作業支援用(腰タイプ)」。世界で初めて腰への負荷を大きく低減できることが科学的に証明されたロボットで、重い建材を運ぶ建設現場や、寝たきりの人などを介助する分野でも使用されている。
サイバーダインは2015年7月に、羽田国内線ターミナルを運営する日本空港ビルデング(9706)と、羽田への次世代ロボット導入などについて基本合意を締結。同年9月から東京空港交通のリムジンバス乗り場で、HALを使った実証実験をスタートした。
約1年間に渡り検証した結果、腰の負担が減り、荷物の積み下ろしが楽になるなど、旅客係員の作業負担を軽減する有効性が確認されたことから、11月24日からの本格導入が決まった。
東京空港交通は、10台のHALを正式導入。サイバーダインと5年間のレンタル契約を結んだ。東京空港交通の増井健人社長は、「バスに積める手荷物は1人30キロまでのものが2個までだが、インバウンド増加で荷物が増え、大型化した。サービスをより良く、より円滑に提供するために、ロボットスーツの役割は極めて大きい」と評価した。
HALの腰タイプは、脳から神経を通じて筋肉へ送られる微弱な電気信号をセンサーが読み取り、腰に付けられたモーターを動かし、人の動作を補助する。これにより、ものを持ち上げたり動かす際に、腰への負担を軽減する。サイバーダインによると、腰の補助率は最大40%だという。
サイバーダインの宇賀伸二取締役は、HALの特徴について、「3つのボタンで操作でき、重さはバッテリー込みで3キロ。連続3時間使用でき、装着したままバッテリーを交換できる」と説明した。また、非常時の安全ブレーキも備えている。
今回のレンタル額は非公表。宇賀氏は参考価格について、「契約内容により異なるが、3年契約で月額10万円」と説明した。
また、HALの腰タイプのカラーリングは黒字にオレンジ。リムジンバスのロゴはオレンジがキーカラーだが、宇賀氏によると偶然だという。
外国人客も注目
本格導入を前に、東京空港交通では実証実験時に係員から出た改良要望をサイバーダインに伝えた。東京空港交通の梅原達也取締役によると、心電図用の肌に貼るセンサーを使っていた当初は粘着シールがはがれやすく、改良を求めたという。
現在は肌に貼るタイプの改良版と、ベルトタイプの2種類を導入しており、今後の運用で決めていく。また、太もものベルトも素材を変えるなど、作業しやすくなるように改良を重ねたという。
羽田のバス乗り場で荷物の積み込みなどを担当する、東京空港交通の子会社リムジンパッセンジャーサービス羽田営業所の旅客係員、松田恵祐さんによると、バッテリーは休憩時に交換することが多いという。使用時の感覚について「姿勢を戻す力が働くので、前にかがんでいると体が戻る感じ」と話した。
女性旅客係員の玉那覇翔子さんは、今後改良して欲しい点について「軽くして欲しい」と率直な意見を話す。「私より小柄な人でも使いやすくなるはず」と期待を寄せた。
これまでの実証実験中、HALを着用して作業していると、特に外国人旅行者が興味を示し、一緒に写真に収まることもあったという。
東京空港交通では、荷物の積み下ろし時の負担軽減のほか、車いすを利用する乗客を介助する際にも、HALを活用していく。
関連リンク
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