三菱航空機が開発中のリージョナルジェット機「MRJ」の飛行試験初号機(登録番号JA21MJ)が8月28日午後0時58分すぎ、県営名古屋空港(小牧)から飛行試験の拠点となる米国モーゼスレイクへ向かうため、経由地の新千歳空港へ飛び立った。昨日は出発から約1時間で引き返したため、米国へ向かうフェリーフライト(空輸)は再挑戦となった。
*今回も名古屋へ引き返しました。記事はこちら。
MRJは午後0時53分に名古屋空港を出発。フェリーフライトのルートは、新千歳空港で給油後、ロシアのカムチャツカ半島、米国のアラスカを経てモーゼスレイクのグラントカウンティ国際空港へ北回りで向かう。到着は現地時間30日夕方(日本時間31日午前)を予定している。
今週に入り、機材点検などで二度の延期を経て、昨日27日昼に新千歳へ向けて出発。ところが、試験飛行空域で空調機器の状態を示す数値に異常が出たことから、出発から約1時間後の午後0時50分に名古屋へ戻った。28日は日曜日とあって、名古屋空港の展望デッキはMRJの出発をひと目見ようと、親子連れやデジタル一眼レフと超望遠レンズを持った航空ファンでごった返した。
5機の飛行試験機のうち、年内に4機をモーゼスレイクへ持ち込む計画。赤いラインの飛行試験2号機(JA22MJ)は5月31日に初飛行に成功しており、黒いラインの飛行試験3号機(JA23MJ)と、赤と黒のラインの飛行試験4号機(JA24MJ)は、9月から10月にかけて初飛行にこぎ着ける見通し。ローンチカスタマーである全日本空輸(ANA/NH)の塗装を施した5号機は、名古屋空港を中心に、国内で飛行試験を進めていく。
しかし、秋以降は雪の影響など気象条件が厳しくなることから、計画通り年内に4機を米国へフェリー出来るかが課題となる。
量産については、今秋から最終組立を開始する見込み。量産初号機のANAへの納入時期は、2018年中頃を計画している。
名古屋空港を起点とした飛行試験では、太平洋上など試験空域まで向かわないと試験を始められない。しかし、モーゼスレイクは飛行試験に適した天候であることに加え、離陸後すぐに飛行試験を始められることから、国土交通省航空局(JCAB)の型式証明を取得するための試験を効率良く実施できる。飛行試験中には不具合が見つかる可能性もあり、現地での改修作業も課題だ。
7月のファンボロー航空ショーでは、スウェーデンのリース会社ロックトンがMRJを最大20機発注する契約締結に向け、三菱航空機と基本合意(LOI)に至った。一方、2月には米国の航空機リース会社エアロリースと最大20機(確定発注10機、オプション10機)の契約に向けてLOIを締結したが、現時点で確定発注に至っていない。
一方、最大のライバルであるリージョナル機大手、ブラジルのエンブラエルが開発した新型機「E190-E2」は、予定を大幅に前倒しし、5月23日に飛行試験初号機(登録番号PR-ZEY)が初飛行に成功した。MRJとほぼ同サイズの機体で同系統のエンジンを採用したE190-E2は、納入時期も同じく2018年を目指している。
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