三菱航空機は、MRJの飛行試験初号機(登録番号JA21MJ)を8月22日の週にも飛行試験の拠点となる米国モーゼスレイクへフェリー(空輸)する。
フェリーフライトのルートは、現在試験を実施している県営名古屋空港を出発し、新千歳空港で給油後、ロシアのカムチャツカ半島、米国のアラスカを経てモーゼスレイクのグラントカウンティ国際空港へ向かう北回りが有力だ。
三菱航空機の森本浩通社長は、7月にロンドン近郊で開かれたファンボロー航空ショーでAviation Wireの取材に対し、フェリーフライトについて「最短距離となる北回りを考えている。秋からだんだん気象条件が厳しくなる」と述べ、今月内の実施を目指す。
5機の飛行試験機のうち、年内に4号機までモーゼスレイクへ持ち込む。赤いラインの飛行試験2号機(JA22MJ)は5月31日に初飛行に成功しており、黒いラインの飛行試験3号機(JA23MJ)と、赤と黒のラインの飛行試験4号機(JA24MJ)は、9月中に初飛行にこぎ着ける見通し。ローンチカスタマーである全日本空輸(ANA/NH)の塗装を施した5号機は、県営名古屋空港を中心に国内で飛行試験を実施する計画を進めている。
量産については、今秋から最終組立を開始する見込み。量産初号機のANAへの納入時期は、2018年中頃を計画している。
モーゼスレイクは飛行試験に適した天候であることや、離陸後すぐに飛行試験を始められることから、国土交通省航空局(JCAB)の型式証明を取得するための試験を効率良く実施できる。飛行試験中に課題が見つかる可能性もあり、現地で改修作業を効率良く出来るかも焦点になる。
一方、最大のライバルであるリージョナル機大手、ブラジルのエンブラエルが開発した新型機「E190-E2」は、予定を大幅に前倒しし、5月23日に飛行試験初号機(登録番号PR-ZEY)が初飛行に成功した。MRJと同系統のエンジンを採用したE190-E2は、納入時期も同じく2018年を目指している。
7月のファンボロー航空ショーでは、スウェーデンのリース会社ロックトンがMRJを最大20機発注する契約締結に向け、三菱航空機と基本合意(LOI)に至った。一方、2月には米国の航空機リース会社エアロリースと最大20機(確定発注10機、オプション10機)の契約に向けてLOIを締結したが、現時点で確定発注に至っていない。
これらの契約を確定発注につなげ、さらなる受注を獲得するためにも、モーゼスレイクへのフェリーフライトを通して、開発が順調に進んでいることをアピール出来るかが重要だ。
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