エアライン, 解説・コラム — 2016年6月13日 09:50 JST

佐山会長「勝負は勝たないといけない」特集・トップが描くスカイマークの将来(後編)

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 前編のつづき。2015年1月に経営破綻したスカイマーク(SKY/BC)は、機材をボーイング737-800型機(1クラス177席)に再統一後、不採算路線から撤退するなどが奏功し、3月28日には民事再生手続きが終結した。

 現在の経営陣は、2015年9月に発足。代表権のある会長には投資ファンド「インテグラル」の佐山展生代表が、同じく代表権のある社長には日本政策投資銀行(DBJ)元・取締役常務執行役員の市江正彦氏が就任した。

 民事再生手続きを終え、次のステージに入ったスカイマーク。終結と同時に発表した2016年度から2018年度の中期経営計画では、国際線就航も視野に入れている。

 一方、課題となっているのが就航地での知名度。会社の名前は知られていても、就航していることが知られていないというギャップを、どう変えていくかが課題の一つとなっている。

 4月からは機長の発案による、プロ野球・阪神タイガースのロゴを機体にデザインした特別塗装機「タイガースジェット」の運航を開始。第2拠点である神戸空港へ就航していることや、関西圏での知名度向上を目指す。

 インタビュー後編では、佐山会長に再生過程や今後を聞いた。撤退した就航地への再就航の可能性、全日本空輸(ANA/NH)とのコードシェア提携交渉、客室乗務員の新制服は、どのようになるのだろうか。

スカイマークの佐山会長=16年5月25日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
踏み込んだ者勝ち
勝負は勝たないといけない
客が何を求めているか
再就航・コードシェア・新制服

踏み込んだ者勝ち

── スカイマークの案件を手掛けた経緯は。

経営破綻した1月28日。スカイマーク本社前には多くの報道陣が集まった=15年1月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

佐山会長:数年前に西久保愼一元社長と会ったが、その後接点はなかった。2014年秋ごろ、日本航空(JAL/JL、9201)やANAとコードシェアすると報じられたので、「何か出来ることがあれば」と電話してみた。

 すると、「明日来てください」と西久保さんに言われたので、12月9日にここ(スカイマーク本社)にお邪魔した。この時は、JALやANAとコードシェアすれば、出資する用意があると話して帰った。

 年が明けて1月に入ると、スカイマークはANAに絞って交渉を進めていた。ところが3連休明けの1月13日に、「断られました」と井手隆司前会長と、有森正和前社長が来られた。その時、“インテグラルはANAとコードシェアするなら出資する集団”と、二人は思われていたようだ。困ったという感じだったが、何とかしてくれませんか? という印象ではなかった。

経営破綻について説明するスカイマークの井手前会長(左)と有森前社長=15年1月29日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 しばらく連絡がなかったが、月末の資金繰りがしんどいのはわかっていたので、1月23日夜、井手さんに連絡した。「明日から破産の準備をする」と井手さんが言われたので、「民事再生できるかわからないが、やるだけやりましょう」と言って、24日からインテグラルの5人が常駐した。

 私は面が割れているから、来るなと言われた(笑)。だから、その時の様子は常駐したメンバーから聞いた。民事再生を申し立てるなら、29日までに申し立てなければならなかった。

 債権を共益債権と再生債権に分け、払わないといけない伝票と、そうでないものを分けなければならなかった。キャッシュフローがどうかなどを調べた結果、(つなぎ融資として)90億円必要だとわかった。そして、1日前倒しの28日夜に申し立てた。

スカイマークの再生支援について説明するインテグラルの佐山代表(手前)=15年2月6日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 われわれがスポンサー契約を結んだ際、融資は90億円を上限とした。民事再生が認可され、実際に動き出せば融資のリスクではないので、すべて株式に転換できることとした。かつ、80%以上になることと書いた。過半数でも少ないというリスクだった。

 ところが、監督委員から「80%という数字を出すと、再生計画が硬直化する」と指摘を受けたので、80%という数字は書面から消した。いずれにせよ、すべて株式に転換できることにした。

 申し立て後、西久保さんから電話があった。「社員と会社をよろしく」と。その後は話していない。電話を掛けてもつながらないからだ。

 井手さんと有森さんに言わせると、民事再生になった後、どこかの航空会社がないとやっていけないわけではないとのことだったので、そのように説明した。

1月末で運航を終えたスカイマークのA330=15年1月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 もう一つは、ニュースが流れて従業員と家族が不安に感じていたので、全支店をまわって説明した。今でも覚えているが、人間の表情には気持ちが出る。あれほど不安そうな表情をしている人の集団は見たことがなかった。いまと全然違う。ファンドが来たと聞けば、ハゲタカ(ファンド)じゃないかと普通は思うだろう。

 そこで、民事再生とインテグラルについて説明した。ある支店では、人員削減について質問があったので、最初からないと答えた。JALのように構造上の大改革が必要なものではなく、原因が明確だったからだ。

 エアバスA330型機やA380型機の計画を止め、737だけにすれば、キッチリまわることを確認していた。人員削減も給与カットもしないと説明した。家族も心配だろうと、家族向け説明会を開いた。

── 5月29日に記者会見を開き、現体制を発表した。

会見には多くの報道陣が詰めかけた=15年5月29日 PHOTO: Haruyoshi YAMAGUCHI/Aviation Wire

佐山会長:スカイマークへの出資比率は、インテグラルが50.1%、(日本政策投資銀行などが出資する)UDSが33.4%、ANAホールディングス(9202)が16.5%。株主間契約はギリギリまで交渉していた。

 記者会見から戻ったら、イントレピッドが出てきた。夕方出てきて、監督委員から「イントレピッドが180億円と書いてあるが、インテグラルは出せるのか」と聞かれたので、「イントレピッドとは話をしていないが、一般論として180億円くらい出せないと、この仕事はしない」と説明した。

 そして、6月1日に東京地裁で両案を付議するとなった。そうなると、どっちになるかわからない。株主間契約の話も止まってしまった。

 8月5日に債権者集会が開かれ、われわれの再生計画案に決まった。

── ANAは最後まで票固めに動いたようだった。

債権者集会後の会見を終えて退席する(左から)スカイマークの井出前会長とインテグラルの佐山代表、ANAホールディングスの長峯取締役=15年8月5日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

佐山会長:かなりやったと思う。じゃないと、あの結果にはならないと思う。

── イントレピッド側はエアバスやロールス・ロイスと関係が深いデルタ航空(DAL/DL)と組み、優勢に見えた。

佐山会長:ある見方をすれば、そういう風に見える状況だった。ANAとデルタ航空のどっちが踏み込むかで、それは当事者にしかわからない。結果的に、ANAが踏み込んだ。踏み込んだ者勝ちだと思っていた。

 両社がどれだけ本件をやりたいと思い、どれだけ票を固めるかだが、それはわれわれにはわからない。ANAは羽田空港の発着枠の問題があり、デルタ航空には日本を固めたいと、どちらも強いニーズがあったと思う。

勝負は勝たないといけない

── インテグラルはこれまで航空関連の案件を手掛けていなかった。

搭乗証明書やオリジナルタオルを手にするタイガースのレプリカユニフォームを着たスカイマークの客室乗務員=16年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

佐山会長:われわれは全部素人。(過去に手掛けた)ヘアカットもネイルサロンも全部素人で、何かに特化しているわけではない。バイアウトファンド全部が基本的にそうだ。業界の知見があるわけではない。

── イメージしていたスカイマークと、経営に参画して違いを感じたか。

佐山会長:正直な話、あまり飛行機には乗っていなかった。海外は別だが、国内はだいたい新幹線だった。ほとんど乗っていなかった。

 今回投資して、いかに世の中の人がこの業界をわかっていないかが、よくわかった。大手と比べ、とんでもない値段の差がある。しかし、多くの人がこのことを知らない。

 われわれが目指しているのは、安全は当然だが定時性。定時性がトップになれば、大手2社に乗るのはよほどお金がある企業か個人しかないと、私は信じている。それくらい、みんなが知らない。私を含めて知らなかった。

 みんなが知らないということは、ポテンシャルがあるということ。さらに、福岡県民の69%しか、スカイマークが羽田-福岡線を飛ばしていることを知らなかった。北海道民の61%しか、羽田-札幌線が飛んでいることを知らなかった。それでも、搭乗率は90%を超えている。

 ということは、認知度を上げればもっと乗ってもらえる。時刻表を地方ごとに作った。札幌から神戸、茨城へ飛んでいるなんて、さらに知らない。羽田で61%なんだから。恐らく、札幌から神戸に飛んでいるなんて、北海道民の2割強くらいしか知らないのではないか。

 知ってて選ばれないのではなく、知らないということだ。知ってもらえれば、乗ってもらえると確信した。やっただけ搭乗率は上がる。

 まず、神戸が認知されていないので、阪神タイガースと組んだ。同様に、札幌からこれだけ飛んでいるんだと、ほかがやっていないイベントをやっていきたい。そういうイベントを考える数名のチームを公募したところ、45人くらい応募があった。

── 存在を知っても、マイルがないなどと言われるのではないか。

佐山会長:マイルは、大企業と個人は違うと思う。大企業は会社のお金なので、あまり意識していないが、個人はマイルを考えるだろう。

 羽田-福岡線の普通運賃が大手で4万円くらいとすると、スカイマークは2万2000円くらい。4割くらい安い。(運賃の)1%くらいのマイルが貯まるからと、乗ること自体がコスト意識のない人たちがやっている。

 いま、上顧客の囲い込みを考えている。マイルという名前になるかはまだわからない。

── 大手も割引運賃で対抗しており、LCCも競合だ。

大手の割引運賃やLCCとの競争をどう勝ち抜くか=15年8月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

佐山会長:割引運賃については、様子を見ながら勝っていかないといけない。大手と比べて運航コストが全然違う。価格で負けるはずがない。それを認識してもらうにはどうすれば良いかが課題だ。

 また、LCCはスカイマークより安いが、安いと思って条件を見ると、予約変更不可で座席指定や手荷物も別料金。スカイマークと同一条件にすれば、高くなる。しかし、そのことが利用者に知られていない。

 これは、われわれが努力しないといけない領域だ。お客さんが勝手に広めてくれるわけではない。あらゆる手を打たないと。

 どんな業界でもそうだが、勝負だ。なんとなくやって、結果がよかったというのはない。勝負は勝ちにいかないといけないし、勝たないといけない。ラッキーでもなんでも、勝たないといけない。

 スカイマークが飛んでいるところは、


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