日本航空(JAL、9201)は9月19日、東京証券取引所第1部へ2年7カ月ぶりに再上場を果たした。初値は売り出し価格の3790円を20円上回る3810円で、一時3905円まで上昇。終値3830円を付けて取引を終えた。時価総額は約6946億円となり、約6330億円の全日本空輸(ANA、9202)を上回り国内最大規模の航空会社となった。
1億7500万株を保有していた企業再生支援機構は全株を売却。3500億円の出資金全額を回収し、JALの再生支援を終えた。
JALの植木義晴社長は同日午後、東証の斉藤惇社長から上場通知書を受領。上場を記念し、稲盛和夫名誉会長と大西賢会長、植木社長が東証の鐘を鳴らした。
記念式典後の会見で、植木社長は「本日の株価に一喜一憂することなく、確実な経営を続けて企業価値を高め、長いスパンで株主にご愛顧いただける経営に努めたい」と抱負を述べた。経営破たん以降、投資を行えなかった点については「魅力ある商品、サービスを発表していきたい」とした。また、大西会長は「人的な面でも投資を行いたい」と語り、ハードとソフト両面で投資を加速していく方向性を示した。
「まったくこういうこと(再上場の日)が来るとは考えていなかった」と再上場を迎えた感想を述べた稲盛名誉会長。「航空運輸市場については素人で経験もなかった。3万2000人の従業員のため、低迷する日本経済のためにもなんとか再生したいという一心だったが、何の勝算もなかった」と振り返り、「歳も歳だけに感無量」と語った。自身の退任時期については、これまで通り2013年3月までとした。
再生支援を手掛けた企業再生支援機構の瀬戸英雄委員長は、「当時JALはダメな会社と言われていたが、しっかりした経営指導があり、リスクマネーをきちんと提供すれば経営再建できることが立証できた」と、今後の企業再生に役立つ成果が得られたと語った。
また、支援手法について議論が起きたことについて、瀬戸委員長は「債権放棄は公的支援の問題ではなく、会社と債権者との合意の問題。資本の提供は公的支援の問題だが、“税金を投入した”という表現は事実といささか違い、非常に情緒的な言い方がされている。税金の問題は一般的な税制の問題だ」として、問題はなかったとの見方を示した。
企業再生支援機構の瀬谷俊雄社長は、「競合会社とのとんでもない格差がついた問題は、制度設計上、やむを得ないと言ったら怒られるかもしれないが、そう言うところが出てくる」と語り、現在の法制度上は起こりうるとした。瀬戸委員長は「結果として不公平な問題が出たのは別の問題であり、手厚い保護、過剰支援という表現でこの問題を語るのは物事の本筋といささかずれていると思う」と見解を述べた。