日本航空(JAL/JL、9201)と日本医師会は2月3日、機内で具合の悪くなった乗客の応急処置に協力する医師の事前登録制度を開始すると発表した。医師がどこに座っているかを客室乗務員(CA)が事前に把握することで、急病の患者に早く対応できるようになる。同様の制度は、日本の航空会社ではJALが初めて。
医師会理事「インセンティブは二の次」
「JAL DOCTOR(ドクター)登録制度」で、日本医師会が発行するIC付きの医師資格証を所持する医師が登録できる。JALマイレージバンク(JMB)の会員であることが条件。登録はJMBのウェブサイトで3日から受け付け、応急処置への対応は15日から開始する。
登録した医師には、空港のラウンジへの入室資格などのインセンティブを用意する。日本医師会の石川広己常任理事は「インセンティブは二の次。医者としての力が発揮できればいい」と話した。
医師資格証はICが埋め込まれたカードで、医師資格を確認できる。2014年から発行を開始した。石川理事によると、日本医師会に所属する約16万人の医師のうち、およそ2500人が所持しているという。
急病人は年間360件発生
JALの路線統括本部商品・サービス企画本部長、加藤淳執行役員は、機内での急病人は1年で350件から360件程度発生していると説明。このうち、機内アナウンスで医師の協力を呼びかける「機内ドクターコール」が必要な事案は3分の2で、およそ半分がドクターコールに呼応するという。
飛行時間の短い国内線は発生する頻度が少なく、長距離を飛行する国際線は国内線と比較しておよそ2倍の件数が発生する、と続けた。
これまでは、CAがどの席に医師がいるかを瞬時に判断できなかった。また、機内ドクターコールに呼応した場合にも、呼応した人物が医師である証明が難しかったという。
また、機内で呼びかけることにより機内に緊張感が走ったが、導入後は呼びかけずに医師に直接、協力を要請することで迅速な対応が可能となる。加藤氏は、「利用者の不安感を払拭し、安心感を与える」と話した。
JALの機内には、蘇生キットやAED(自動体外式除細動器)など、医療機器を国内・国際線の全便に搭載。飛行中、国内・海外を問わず、機内から専門医の助言を得られるネットワークを構築している。今年1月からは、血中酸素濃度を測定する「パルスオキシメーター」を搭載している。
加藤氏によると、世界の大手航空会社のうち、同様の制度をルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)が導入しているという。
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