FAA(米国連邦航空局)はタイの航空当局に対し、安全評価を「カテゴリー2」に格下げしたと現地時間12月1日に発表した。国連の専門機関ICAO(国際民間航空機関)の安全基準を満たしていないため。当局がカテゴリー2の評価を受けると、タイの航空会社は自社の安全性に問題がなくても、米国への新路線開設などが出来ない。
タイは1996年にカテゴリー2の評価を取得し、翌1997年にはカテゴリー1に格上げ。2001年と2008年の再評価時も、カテゴリー1を維持していた。
しかし、今年7月の再評価で、タイ当局が安全基準を満たしていないことが発覚。10月28日に格下げが決定した。FAAは今後、タイ政府と協議を続ける。
3月にICAOが安全懸念指摘
タイ航空当局は今年3月、ICAOから「重大な安全上の懸念(SSC)」の指摘を受けた(関連記事)。しかし、この時点ではFAAやEASA(欧州航空安全局)が、タイ当局の安全性問題について、対外的には大きく取り上げていなかった。
一方、日本の国土交通省航空局(JCAB)はタイの航空会社に対して、新規就航などを認めない措置を取った。
ICAOから指摘を受けた際、今回のFAAによる格下げ措置のような表立った動きが欧米当局にみられなかったことから、タイ当局は当初、影響が限定的との姿勢だった。
タイ当局の安全監督能力を問題視
FAAは国際航空安全評価(IASA)を実施。国や地域ごとに、ICAOの安全基準を満たす「カテゴリー1」と、満たさない「カテゴリー2」に区分している。当該国の航空当局の安全監督能力や、技術者の資格基準など、8つの項目で審査する。
調査対象は89の国と地域で、このうち81の国と地域がカテゴリー1に指定されている。残り8つの国と地域がカテゴリー2で、タイのほか、バングラデシュとバルバドス、ガーナ、インドネシア、ウルグアイの6カ国と、オランダ領キュラソーとシント・マールテンの2地域が指定されている。
タイからの米国便は、タイ国際航空(THA/TG)がバンコク-ロサンゼルス線をソウル(仁川)経由で、夏ダイヤ最終日となる今年の10月24日まで運航していた。今回の格下げはタイ当局に対するものであることから、タイの航空会社には国際線計画に影響が及ぶ可能性がある。
関連リンク
Federal Aviation Administration
ICAO
Department of Civil Aviation, Thailand
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・【スクープ】ICAO、タイ航空局に「重大な安全上の懸念」指摘へ 日本への新規就航に影響も(15年3月13日)