ユーグレナ(2931)は12月1日、ミドリムシを用いた国産バイオジェット・ディーゼル燃料を、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに実用化を目指す計画を発表した。
日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを、2018年の稼働を目指して横浜市鶴見区に建設。バイオジェット燃料の実用化は全日本空輸(ANA/NH)の、バイオディーゼル燃料はいすゞ自動車(7202)の協力を得て、それぞれ2020年までの実用化を目指す。
17年認証取得目指す
ユーグレナは、ミドリムシから抽出した油脂や廃油などを原料とするバイオジェット燃料の研究を2010年5月から、バイオディーゼル燃料の研究開発は2014年6月からいすゞと開始。今年6月には、バイオ燃料製造技術の1つである「バイオ燃料アイソコンバージョンプロセス技術」に関するライセンス契約とエンジニアリング契約を、米国シェブロンラマスグローバル社との間で締結している。
2020年に向けた国産バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化に向けては、ANAといすゞのほか、横浜市と千代田化工建設(6366)、伊藤忠エネクス(8133)の協力を得て進める。
プラントの投資額は約30億円で、ユーグレナが全額負担。横浜市が「環境・エネルギー分野の拠点形成」を目指す京浜臨海部の旭硝子京浜工場内に、2016年夏から建設を開始。2017年内の竣工と2018年前半の稼働を目指す。敷地面積は約9000平方メートルで、実証プラントの稼働後は商業用プラントの計画を進める。プラント建設や運営支援を、千代田化工建設が担う。伊藤忠エネクスは、ミドリムシ以外のバイオ燃料原料の調達などを担当する。
実証プラントの製造能力は1日5バレル(約794.9リットル)で、年間125キロリットルのバイオ燃料製造を目指す。2017年には米国のASTM(米国材料試験協会)規格による認証を取得予定で、国内初のASTM規格準拠のバイオジェット燃料設備となる見通し。ANAは空港での給油など、運用面の提案などで協力する。
海外の航空会社では、バイオ燃料による乗客を乗せた商用フライトが実現しているが、国内航空会社によるバイオ燃料の利用実績は、3社が1回ずつのテストフライトにとどまっている。ANAとは、2020年までにミドリムシ由来の国産バイオ燃料で、商用フライトの実現を目指す。
ユーグレナによると、バイオ燃料用のミドリムシは同社が食用としているものよりも、油脂を多く採れる培養方法を用いるという。また、油脂が多いミドリムシの発見などの研究も進めていく。2-3キログラムのミドリムシの粉末で、1リットル製造できるという。
1時間程度の路線計画
ユーグレナの出雲充社長によると、ANAを傘下に持つANAホールディングス(9202)が同社に株主として出資し、これまでも研究開発に協力してきたことから、支援を依頼したという。他の国内航空会社との連携についても、「進捗について官民の協議会などを通じ、共有させていただいている」(出雲社長)と説明した。
また、バイオ燃料とケロシン系ジェット燃料の混合比率について、ANAの殿元清司専務は「バイオ燃料を10%程度考えている」と語った。殿元専務によると、約1時間の路線で特定便の商用フライトを、1週間に1度程度実施する計画だという。
ANAは羽田空港のほか、伊丹空港にも整備拠点を設けていることから、片道約520キロで飛行時間が約1時間10分の羽田-伊丹線などが候補になるとみられる。
これまでにANAではボーイングと共同で、2012年4月に787-8型機のデリバリーフライトで、既存のジェット燃料にバイオ燃料を15%混合した燃料を使用。主に使用済み食用油を原料としたバイオ燃料で、米国シアトルのエバレット工場から羽田まで、太平洋横断フライトを成功させている。
また、ANAは12月1日までに787-8を35機 787-9を9機の計44機の787を受領している。1日の発表会は羽田の格納庫で、受領したばかりで運航前の787-9(登録番号JA875A)を前に開かれた。