国産初のジェット旅客機、三菱航空機の「MRJ」が11月11日、初飛行した。午前8時40分すぎにパイロットが搭乗してドアが閉まり、午前9時35分に愛知県の県営名古屋空港(小牧空港)を離陸した。
*初飛行に成功しました。
・MRJ、初飛行成功 離陸の瞬間「飛びたいと言っているようだった」(15年11月11日)
初飛行した機体は5機ある飛行試験機のうち、2014年10月18日にロールアウトした初号機(登録番号JA21MJ)。機体を製造する小牧南工場に隣接する名古屋空港を離陸後、周辺を1時間程度飛行し同空港へ戻る。
基本性能を確認
今回の試験では真っ直ぐに飛ぶかや左右に曲がれるかなど、基本的な操縦特性を確認し、上空で着陸状態をシミュレーション後に着陸する。MRJは三菱重工業(7011)の社有機と防衛省の航空機を伴って飛行し、機体の状況を両機から把握する。
MRJの初飛行は、これまでに5度延期。直近では10月26日から30日の間に実施予定だったが、操舵用ペダルの改修が必要になり延期した。29日に国土交通省航空局(JCAB)から飛行許可を取得後は高速走行試験などを実施し、初飛行に向けて準備を進めてきた。
11日午後には、三菱航空機の森本浩通社長と岸信夫副社長が名古屋市内で会見し、パイロットも登壇する予定。
国産旅客機の初飛行は、半民半官の航空機メーカー、日本航空機製造によるターボプロップ機YS-11型機の試作1号機(登録番号JA8611)以来、53年ぶり。YS-11の初飛行は1962年8月30日で、MRJと同じく名古屋空港で行われた。延期が重なったMRJの初飛行は、奇しくも“11”が並ぶ11月11日となった。
ANAとJALが導入
MRJは、主に地方路線で運航するリージョナルジェット機。同クラスのライバル機と比べて広く快適性を追求した客室や、機内持ち込み可能な最大サイズのキャリーバッグが入る大型の手荷物収納棚、新型エンジンや細い胴体による空力特性で実現した低燃費などが特徴で、これまでに407機(確定受注223機、オプション160機、購入権24機)を受注している。
2008年3月27日、全日本空輸(ANA/NH)がローンチカスタマーとして25機(確定15機、オプション10機)を三菱重工に発注し、事業化が決定。同年4月1日には設計や型式証明の取得、販売などを手がける三菱航空機が営業を開始し、三菱重工は製造を担う。
MRJは2機種で構成。メーカー標準座席数が88席のMRJ90と、76席のMRJ70があり、現在はMRJ90の試験を実施している。エンジンはいずれも低燃費や低騒音を特長とする、米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)製のギヤード・ターボファン・エンジン「PurePower PW1200G」を採用する。
試験機は地上で強度試験を実施する強度試験機2機と、実際に飛行して試験を実施する飛行試験機5機を製造。このうち飛行試験5号機(登録番号JA25MJ)には、ANA塗装を施す。飛行試験機は日本で一定期間の試験後、2016年夏以降は米ワシントン州モーゼスレイクで試験を重ねていく。
国内ではANAのほか、日本航空(JAL/JL、9201)も今年1月28日に32機を確定発注。ANAでは地方路線を担うANAホールディングス(9202)傘下のANAウイングス(AKX/EH)が、JALではグループのジェイエア(JAR/XM)がそれぞれ運航する。
機体の安全性を証明するJCABによる型式証明の取得は2年後の2017年前半、量産初号機のANAへの引き渡しは、同年4-6月期を目指す。
残るYS-11、自衛隊機のみ
53年前に初飛行に成功したYS-11は、182機(うち試作機2機)が製造された。国内では航空会社のほか、運輸省(現国土交通省)航空局や自衛隊、海上保安庁が採用した。
国内の旅客定期便からは2006年9月30日、日本エアコミューター(JAC/JC)の沖永良部発鹿児島行きをもって運航から退いた。その後、飛行検査機として運用していた航空局では2006年12月22日に、海上保安庁では2011年1月13日に、海上自衛隊では2014年12月26日に退役。現在は航空自衛隊機を残すのみとなった。
関連リンク
MRJ
MRJ First Flight Live(USTREAM)
県営名古屋空港
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初飛行に成功
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