プライベートの充実や会議の進め方などを変えることで、仕事の生産性向上を図る試みを、日本航空(JAL/JL、9201)が進めている。取り組みの一環として、部長級以下5000人を対象としたワークショップを開いており、10月7日は東京・天王洲にある本社で開かれた。
2度目の開催となる今回は、1時間のワークショップを朝から夕方まで4つの時間帯に設定して計約380人が参加。プライベートを充実させる働き方の事例紹介や、在宅勤務など制度面の説明など、6つのテーマごとにブースが設けられた。社員が3つのテーマを聴講できるよう、各ブースでは同じ内容の講義を15分ごとに3回開いた。
社員が講師役
講師は社外から呼ぶのではなく、各部署が現在取り組んでいる業務改善策を、社員自ら発表する方式を採用した。
今回取り上げたテーマは、調達本部による「初めてのペーパーレス」、人財本部の「プライベートを充実させる!」と「制度を知ろう!」、国際路線事業部の「会議運営・ファシリテーション」、IT企画本部と人財本部による「自席外でのノートパソコンの活用」、JALエンジニアリング 羽田航空機整備センターの「業務の見える化と業務改善の進め方」の6つ。終了後は参加者にアンケートに答えてもらい、講師担当は内容の改善に役立てる。
プライベートの充実による生産性向上では、社員一人ひとりが自分の時間を充実させ、会社では得られない体験を通じて成長することが柱となる。これまでは仕事中心だったことで、幅広い知識や経験が身につかず、特に女性の場合は家庭の事情で仕事が続けられなかったり、働きにくい状況になることが多かったと、講師役の社員が説明した。
働き方を変えることで、これまで得られなかった豊かな発想を、新しいサービスの発案などにつなげていく。ワークショップでは事務処理や移動時間といった、価値を生まず消費するだけの「消費時間」をペーパーレス化や在宅勤務などで削減し、個人の時間を充実させることの重要性を説いた。
プライベートを充実させて生産性を向上させる例として、地域の野球チームの監督を引き受けることで得たマネジメント経験を仕事に生かすことや、皇居の周りをランニングすることでストレスを解消し、知り合った仲間と大会に出場することで行動範囲や人脈を広げた事例が紹介された。
先行例はイメージしやすい
ワークショップに参加した、路線計画部ダイヤ運用グループのアシスタントマネジャー、岩﨑慎一さんは小学生と幼稚園児の子供がいる。在宅勤務の仕組み紹介や、ペーパーレス化などを聴講した岩﨑さんは、「在宅勤務を活用して、妻と子供の送り迎えを交代で出来るようにしたい」という。
非定期便の機材運用などを受け持つ岩﨑さんの手元には、過去の担当者から引き継いだ大量の資料がある。「パソコン内のファイルやフォルダ名も、これまでは人それぞれで必要なものを探すのに時間がかかっていた。ワークショップで知ったファイル名のルールなどで効率化したい」と話した。
「ビジネス書を読んで知っていることもあったが、社内で実践されている先行例なので、よりイメージしやすかった」という。
人事部ワークスタイル変革推進室アシスタントマネジャーの久芳珠子さんは、今回の取り組みについて「会社が指定するのではなく、好きなテーマを自分で3つ選んでもらうことで、自主性を大事にした」と話す。
JAL本社での開催は11月までで、12月からは羽田や成田をはじめ、各空港で展開していくという。
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日本航空
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