川崎重工業(7012)は9月24日、ボーイングの大型機777の後継となる777X用の新工場建設に着手したと発表した。航空機用製品の生産や組み立てを担う名古屋第1工場(愛知県弥富市)内に建設する。2016年12月末に竣工し、2017年5月から稼働を予定している。
ロボットによる自動化
777Xの製造では、川崎重工は前部胴体と中部胴体、主脚格納部、後部圧力隔壁、貨物扉を担当。新工場は生産設備の自動化を進め、高性能センサーを使った検査装置などを導入して製造工程の効率化を図る。
主な設備として、胴体外板を継ぎ合わせて穴開けやリベット留めをする新型の「スキン・スプライス・リベッター」や、胴体部品と補強部品を穴開けやリベット留めで締結する新型の「フレーム・シアタイ・リベッター」を導入。従来よりも複雑な部位の加工が可能になり、加工できる範囲も拡大するという。
ロボットによる自動化では、大口径ドリルを使用し、胴体外板を自動で穴開けするロボットなどを投入。製造コストを引き下げる。
新工場の建物延床面積は約1万3000平方メートル、全長200メートル、幅50メートル、高さ19メートル。川崎重工では、岐阜工場で部品を製造する建屋の拡張も計画しており、777X関連では今回着工した新工場や新型設備を含めて総額約250億円を投資する。
ボーイングは、777Xの製造コストの大幅な引き下げをサプライヤーに求めており、さらなる自動化が課題となっている。川崎重工は自動車製造などで使う汎用ロボットを製造しており、ロボット部門と連携して自動化を進める。
ANAが20機導入、分担割合21%
777Xは777-8と777-9の2機種からなり、777-9の製造開始は2017年、初号機の引き渡しは2020年を予定。3クラスの標準座席数は777-8Xが350から375席、777-9Xが400から425席、航続距離は777-8Xが8700海里(1万6110キロメートル)、777-9Xは7600海里(1万4075キロメートル)を計画している。エンジンは米GE製GE9Xを採用する。
受注機数は、コミットメントを含めると6社から320機。このうち、確定発注は306機となっている。日本の航空会社では、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(9202)が、2014年7月31日に20機の777-9を777-300ERの後継機として確定発注している。
日本の製造分担割合は、現行の777と同じ主要構造部位の約21%。川崎重工のほか、三菱重工業(7011)と富士重工業(7270)、新明和工業(7224)、日本飛行機の5社が参画する。
担当部位は777を基本的に踏襲。三菱重工が後部と尾部胴体、乗降扉を、富士重工が中央翼、中央翼と主脚格納部の結合、主脚扉、翼胴フェアリング(前部)を、新明和が翼胴フェアリング(中・後部)を、日飛が主翼構成品の製造を担当する。主翼の炭素繊維複合材は、東レ(3402)が供給する見込み。
エンジンのGE9Xについては、IHI(7013)が低圧タービン部品などを担当。内装では、ジャムコ(7408)がラバトリー(化粧室)を独占受注している。
今年8月には最初に開発する777-9について「ファーム・コンフィギュレーション」と呼ばれる仕様策定が完了。今後は風洞実験などを実施後、詳細設計を進めていく。
関連リンク
川崎重工業
777X: The Wing is the Thing(ボーイングの動画)
Boeing
ボーイング・ジャパン
777X関連
・ボーイング、777Xの仕様策定 17年生産開始へ(15年8月28日)
・777X、日本企業5社が正式契約 21%製造(15年7月23日)
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