「自分が社長に選ばれたことも、この会社のダイバーシティ(多様性)だと思う。未だかつて、パイロットが社長になったことはない。業務職の人たちとは別の背景、違った能力や感性、価値観を持つ人間が今、社長を務めている」。7月初め、日本航空(JAL/JL、9201)が社員向けに開いたフォーラム「第1回 女性活躍推進とワークスタイル変革」で、植木義晴社長はこう語りかけた。
企業経営で、近年キーワードとして語られるダイバーシティ。特に女性の経営陣登用など、女性に焦点をあてた話題が多い。同フォーラムも、女性が全社員の47%を占める同社で、今後女性が働きやすい職場にしていくためには、どのような課題をどう解決していくべきかをテーマに据えた。JALグループ役員や部門長、一般社員など200人が参加し、役員も自らの育児体験などを披露し、男女差のない職場作りのヒントを探っていた。
—記事の概要—
・自分にフタしないで
・女性優遇ではなく早期復帰で育成
・女性への気遣い「間違っている」
・上司の曖昧な指示が残業生む
・数合わせはいけない
自分にフタしないで
JALでも、取締役に客室乗務員出身の大川順子専務を、社外取締役には資生堂で副社長を務めた旧労働省(現厚生労働省)出身の岩田喜美枝氏を登用し、女性の活躍の場を広げている。
「破綻前は52人の役員がいたが、女性1人しかいなかった。しかも客室本部の“副”本部長だった。いま役員は39人と4分の3になったが、女性は4人」(植木社長)と変化を語る。
植木社長は、今後のJALには女性が活躍できる職場作りが不可欠だと話す。
「この会社を世界一にするために、女性の活躍を全社で進めなければならない。そのためには2つ必要だと考えており、一つが体制作り。これは会社としてしっかりやる。もう一つは一人ひとりが意識を変えなければならない」と、組織作りだけでは実現できないと明言した。
「決して女性を甘やかすのではなく、男性と同等に働けるようにする。チャンスをつかみ取るのは、女性一人ひとりなので、『自分はここまで』と、フタをしないで欲しい」と要望を述べた。
女性優遇ではなく早期復帰で育成
フォーラムでは岩田氏が登壇し、女性社員の優遇ではなく育成が重要だと講演した。
岩田氏は「個性ある社員が多い方が、多様な利用者に対応出来る。例えば女性客のニーズは、本質的には女性しかわからない」と、多種多様な価値観を持つ社員が企業の力になると語った。
一方で、現在女性社員が活躍しやすくする仕組みとして取り入れられている、出産後の育児期間中の短時間勤務などを再考すべきと指摘する。女性社員を優遇するのではなく、早期に現場復帰してもらい、育成を強化すべき、という考えだ。
岩田氏は「女性は職場の異動回数が男性より少ない」として、日々の業務による育成(OJT)だけではなく、これまでは男性社員が異動していたような部署も女性に経験させることに、育成効果が期待できるという。
女性管理職を何パーセントに、といった数値目標についても、「数値目標を決めても、仕事を通じて育成しなければ何の意味もない」と断言。手厚い支援や数値目標にとらわれすぎることが、結果として女性社員が成長する機会を奪ってしまうと警鐘を鳴らした。
女性への気遣い「間違っている」
また、岩田氏は女性社員を部下に持つ男性も、意識改革が必要だと説く。「JALは女性に気を遣っているのがわかるが、間違っている部分がある」と指摘し、やさしさが的外れな部分があるという。
改善策として、部下の性別ではなく、
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