航空会社といえば、客室乗務員や空港旅客係員など、女性の活躍が目立つ職場が多い。日本航空(JAL/JL、9201)では、2010年に日本初となる旅客機の女性機長が誕生している。同社は整備部門でも同じ2010年、出発前に最終確認する責任者の社内資格「ライン確認主任者」を、同社では初めて女性整備士が取得した。2003年入社の武藤美希整備長だ。10年は掛かると言われるこの資格に、7年でたどり着いた。
資格取得時は羽田空港で整備にあたり、ログブックにサインしていた武藤さんは、2012年2月末にハワイのホノルルへ異動。現在はJALのホノルル空港所整備セクションに所属し、日本へ帰る便を日々送り出している。
2014年12月にJALがハワイの地元住民を招待して開催した、ホノルル線就航60周年の遊覧飛行(ボーイング767-300ER型機)も、武藤さんが整備の責任者を務めた。
1日の離発着便数が日本最大の羽田と比べ、国際線の就航地の多くは1日1便から3便ほど。国際線の中で見ると、ホノルルは1日6便と便数が多い。成田空港から3便、羽田と中部、関西の各空港から1便ずつと、10便以上運航していた頃と比べれば減少したが、JALの中では慌ただしい空港の一つと言える。
リゾート路線ゆえ、ほぼ同じ時間帯に到着便が集中しているのも特徴だ。朝8時台に着く成田便から昼頃の羽田便まで、ひっきりなしにやってくる6便を整備しなければならない。遅延が発生すると10分から15分おきに到着することすらあり、羽田とは違ったスキルが求められる現場だ。
現在の夏ダイヤではボーイング777-200ERと、ビジネスクラスにフルフラットシートを導入した767-300ERの新仕様機「スカイスイート767」が、ホノルルへ乗り入れている。
日常の整備作業ひとつを取っても、羽田と比べて限られた人員でこなしていかなければならない。送り出した飛行機は、数時間洋上を飛ばなければならず、責任は重い。
—記事の概要—
・責任がやりがいに
・何かを直す魅力
・9時間の洋上飛行を送り出す責任
・1カ所の汚れが飛行機全体の不信に
繁忙期の夏を控えたホノルルで、武藤さんに整備士としてのポイントや、自身の原点を聞いた。
責任がやりがいに
ホノルルの整備士は7人で、ほかには委託先のメカニックしかいない。シフト制なので、不具合が起きても全員で対処できるわけではない。そして、到着便はほぼ同じ時間帯にやってくるので、1便に割ける人数も限られる。
「何かトラブルがあれば、私たちは無線で不具合情報を流します。羽田であればマニュアルを準備する人、部品を用意する人、乗員やお客様へ説明するマネージャーと、手分けして対応出来ます。しかし、ホノルルでは、何もかも基本的に自分でやらなければなりません」と話す。
トラブルが起きても、大勢で対処できていた羽田時代を、「すごく守られていたと感じます」と振り返る。羽田を発着する国内線は、折り返すまでのステイタイムが短い。それ故、武藤さんは各仕事に長けた人をアサインすることが大事だと考えていた。
しかし、自分が苦手な作業を他人がやってしまう状態が続くと、本人の成長につながらない。人数が限られるホノルル。「良くも悪くも、自分でやらなければなりません。苦手なものは時間がかかってしまったり、他の整備士にうまく説明できなくて、誤解が生じることがあっても、すべて自分の責任でやらなければなりません。それがやりがいにつながりました」と話す。
「無理矢理こうした状況に置かれないと成長しない」という武藤さんは、自身の成長度合いを、「どれだけ伸びているかはわからないですが、赴任した当時の不安しかない状態よりは、気持ちの面でだいぶ強くなりましたね」と、これまでの経験を振り返る。
2014年3月には、羽田発サンフランシスコ行きJL2便のボーイング787-8型機が、右側エンジンのトラブルでホノルルへ緊急着陸。当時787はホノルルへ就航していなかったが、初動対応は武藤さんを含むホノルルのスタッフが対応し、乗客のケアや交換用エンジンの手配に奔走した。すべてを自分たちでこなさなければならない日々を送っていたことは、予期せぬ出来事への対応力向上にも、つながっていたようだ。
何かを直す魅力
現在JALの整備士は約3000人で、女性は2.3%にあたる70人。女性のライン確認主任者は、武藤さんを入れてまだ5人だ。
空港のない山梨県で育った武藤さん。中学生のころは、
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