関西空港と伊丹空港の運営権売却に向けた1次入札が、5月22日に開かれた。応札したのは、すでに名乗りを挙げていたオリックス(8591)と、仏空港運営会社ヴァンシ・エアポートによる企業連合のみ。総額2兆2000億円以上の運営権対価や45年間という運営期間の長さなど、重しとなる懸念材料を払拭することはできなかった。
両空港を運営する新関西空港会社の安藤圭一社長は14日、オリックス・ヴァンシ連合以外に参加する可能性を報道陣から問われた際、「あと1週間ある」と応じたが、名乗り出る企業はなかった。
—記事の概要—
・長期運営はリスク
・オリックス「航空分野だからではない」
長期運営はリスク
「45年はいくらなんでも長すぎる」。インフラ投資を手掛ける金融機関の関係者は、1次入札を前にこう語った。「これだけ先行きが不透明な時代、20年程度が限界では」と続け、長期運営のリスクを指摘する。
一方、新関空会社の安藤社長は、運営期間について「30年くらいで良いかなと思った」とした上で、新会社が新たに空港へ投資した場合、運営期間内の回収が難しくなる可能性を指摘。45年間に設定した背景を説明した。
投資回収よりも、長期運営をリスクと見る企業側。新関空会社が、どの程度歩み寄るかによっては、交渉が長引く可能性がある。
応札したオリックスは、「これから詳細を交渉することになる」と述べ、運営期間の短縮なども求めていくとみられる。
オリックス「航空分野だからではない」
今回の運営権売却は、コンセッション方式で行われる。この方式では、両空港の滑走路やターミナルなどの資産を、国が100%出資する新関空会社が所有したまま、入札を経て選ばれた民間企業が設立する特定目的会社(SPC)が新会社として運営する。
オリックスは、航空機リースも手掛けている。しかし、「航空分野だから(応札した)、というわけではない」として、インフラ投資の一つとして空港運営に参画し、収益拡大を目指す考えだ。
一方、ヴァンシは「事業の重複が少なく、相互補完関係が築ける」とオリックスと組んだ理由を説明する。新関空会社では入札要件として、関空や伊丹の設置・運営経緯を理解していることを挙げており、関西発祥のオリックスが地域事情に精通していることも、パートナーに選定した理由の一つだ。また、今回の関空・伊丹を成功させ、今後運営権売却が見込まれる日本国内の他空港の運営に参入する思惑もあるようだ。
1次入札は1グループの応札で終わったものの、不成立で終わる可能性は低い。6月15日に予定されている2次入札は、3カ月程度延期となる見通しだ。安藤社長はこれを否定するが、延期となれば、当初1月を予定していた新会社による運営開始は、4月以降にずれ込むとみられる。
今後は、オリックス・ヴァンシ連合にどういった企業が参集し、課題となる運営期間の短縮がどの程度行われるかがカギとなる。
関連リンク
新関西国際空港株式会社
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