シンガポール航空(SIA/SQ)系LCCのスクート(SCO/TZ)は5月21日、関西空港へ7月8日から就航すると発表した。シンガポールからタイのバンコク(ドンムアン)経由と、台湾の高雄経由の2路線。関空は16番目の就航地で、日本では成田に続き2番目となる。(関空就航時の記事はこちら)
機材はボーイング787-9型機(375席)で、同社が787-9を日本路線に投入するのは初めて。日本路線拡大に伴い、大阪市内で会見したキャンベル・ウィルソンCEO(最高経営責任者)は、9月に日本人客室乗務員(CA)を採用することを明らかにした。
バンコク・高雄へ週3往復ずつ
SCOは、関空ーシンガポール間を週6往復で開設。バンコク経由と高雄経由を週3往復ずつ運航する。就航記念として、関西ーシンガポール間とバンコク間を片道8000円から、関西ー高雄間を片道5000円から販売する。販売期間は5月21日から24日午後11時59分までで、搭乗期間は7月8日から10月24日まで。
運航スケジュールは、バンコク経由便がシンガポールを午前9時5分に出発し、バンコクを午前11時30分に出て関空へ午後6時50分に着く。関空発は午後8時25分に出発し、バンコクには翌日午前0時5分、シンガポールへは午前4時40分に到着する。高雄経由便は、シンガポールを午前6時15分に出発し、高雄を午前11時35分に出て午後3時15分に関空へ着く。関空発は午後4時15分で、高雄には午後6時55分、シンガポールへは翌日午前0時25分に到着する。
関空を発着するLCCでは、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)が高雄へ1日1往復、タイ・エアアジアX(TAX/XJ)がバンコク(ドンムアン)へ1日1往復運航している。
787は日本初投入
SCOの日本路線では初投入となる787-9の座席数は、スクートビズ(プレミアムエコノミー)35席、エコノミー340席の計375席。スクートビズは2-3-2配列で、ゆりかごのような角度になるリクライニング機能を備える総革張りシートを採用する。エコノミークラスは3-3-3配列となる。機内インターネット接続やシート電源など、オプションのサービスも用意する。
エンジンは英ロールス・ロイスのトレント1000。シンガポールのセレター航空宇宙産業団地で製造したものが搭載される。
SCOは787-8と787-9を10機ずつ計20機発注済み。5月現在では777-200(402席:スクートビズ32席、エコノミー370席)を3機と787-9を3機の計6機を運航しており、8月には6機すべてが787-9に統一される。12月までに787のみで10機体制になる見通し。
「関西はお得感重視」
ウィルソンCEOは、「大阪にはたこ焼きがあり、奈良や京都、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)といった観光地を擁している」と、豊富な観光資源を持つ関西圏への就航意図を説明。「シンガポールはたこ焼きのような食文化、タイでは日本文化全般に関心を持つ人が多く、台湾からは日本へのリピーターがいる」と語った。
また、787を関空路線に投入することについて、「関空にわれわれの787が降り立つのは、今回が初めてではない。787の初号機を受領した際、シアトルからシンガポールへのフェリーフライト(回送)では、関空に立ち寄って燃料補給や乗員交替を行った。我々の787が関空へ戻ってこられてうれしい」(ウィルソンCEO)と話した。就航が7月となった理由については、「787の引き渡しスケジュールによるもの。関空へ飛ばせる機材がなかった」と説明した。
SCOは2012年10月、初の日本路線となる成田ーシンガポール線を台北経由で開設。坪川成樹日本・韓国支社長によると、成田線のロードファクター(座席利用率)は1月が86.4%、2月は94.0%、3月は92.2%で、2015年1-3月期の平均は90.8%。坪川支社長は、「成田線の就航当初は日本人の乗客は2割から3割だったが、3年近く経った現在は半々になっている」と述べ、SCOの創業当初から検討していたという関空路線についても、同様の傾向になるとの見通しを示した。
かつてSIAの日本支社長を務めたウィルソンCEOは、「関西圏でお得感を重視することは理解している。関空は就航便の25%がLCCなので、受け入れられるだろう」と語った。
「スクートビズのサービスはプレミアムエコノミークラスの内容だが、値段はエコノミークラス。エコノミーも、シートピッチがフルサービス航空会社と同じ31インチ(78.7センチ)から、広い席は35インチまで選べる」(ウィルソンCEO)と述べ、値ごろ感を強調した。
羽田「検討していない」
今後の路線展開についてウィルソンCEOは、深夜早朝枠を活用した羽田便開設の可能性を「検討していない。系列のノックスクート・エアライン(NCT/XW)が就航する際は、ぜひ検討したい」と述べ、羽田ーシンガポール線を運航している親会社のSIAと、住み分けを図る意向を示した。
NCTは、タイ国際航空(THA/TG)系LCCのノックエア(NOK/DD)と合弁で立ち上げたLCC。当初は、3月末までに成田-バンコク(ドンムアン)線の開設を予定していた。ところが、3月にICAO(国際民間航空機関)がタイ航空局の安全審査体制を問題視した影響で、タイ国籍の航空会社は原則として新路線開設が認められておらず、NCTも就航延期を余儀なくされている。
日本採用を強化
日本路線の拡大に合わせ、日本での採用を強化する。ウィルソンCEOは、「パイロット70人のうち、3人が日本人。CAは約360人のうち30人が日本人だ」と現状を説明した。
9月に日本で実施する採用活動では、CAを20人から30人探したいという。「NCTの日本就航後は、同社でも日本人を探すことになるだろう」と話した。
運航スケジュール
シンガポールーバンコク(ドンムアン)ー関西線
TZ298 シンガポール(09:05)→バンコク(10:10/11:30)→関西(18:50)運航日:水金日
TZ297 関西(20:25)→バンコク(翌日00:05/01:15)→シンガポール(04:40)運航日:水金日(バンコク発は木土月)
シンガポールー高雄ー関西線
TZ288 シンガポール(06:15)→高雄(10:25/11:35)→関西(15:15)運航日:火木土
TZ287 関西(16:15)→高雄(18:55/20:05)→シンガポール(翌日00:25)運航日:火木土
関連リンク
スクート
・スクート、787-9で関空就航 バンコク経由のシンガポール便(15年7月8日)
・ボーイング、スクートに787-9納入(15年2月2日)
・ロールス・ロイス、シンガポール製トレント1000公開 スクートの787向け(15年1月23日)
・スクート、関空就航へ 787は15年5月成田投入、ノックスクートは1-3月(14年10月4日)
・スクート、787-9は375席に 11月から受領、全席電源付きでWi-Fi装備(14年2月10日)
・LCCスクート、成田-シンガポール線就航 787は14年から(12年10月29日)
・なぜタイ航空局は安全性を問題視されたのか 旺盛な訪日需要に影響も(15年3月31日)
・【スクープ】ICAO、タイ航空局に「重大な安全上の懸念」指摘へ 日本への新規就航に影響も(15
【お知らせ】
機体と機内の画像を追加しました(2015年5月21日 17:11 JST)