エアバスが世界中の大学生を対象に、未来の航空輸送を描く斬新なアイデアを募集するコンテスト「Fly Your Ideas」の第2ラウンド(2次予選)に、東京大学と早稲田大学のチームが進出した。
同コンテストの第1ラウンドには、90カ国から518チーム、2146名が出場。エアバスの技術者や専門家ら50人以上によって審査が行われ、第2ラウンドには100チームが進出した。日本の大学からは12チームが参加し、東京大学の「Birdport(バードポート)」チームと早稲田大学の「Our BOSS(アワ・ボス)」チームが第2ラウンドに進んだ。
現在両チームは第2ラウンド突破を目指し、エアバスの専門家の助言を受けながら、アイデアに磨きを掛けている。航空業界の規制を考慮することも、第3ラウンド進出の重要な要素だ。
3月31日、都内にあるエアバスの日本法人エアバス・ジャパンのオフィスに、両チームのメンバーが集結。報道関係者にアイデアを披露した。
早稲田のOur BOSSチームは、基幹理工学部機械科学・航空学科の吉川潤さんと松本遥香さん、廣瀬優さん、永井俊行さんの4人。東大のBirdportチームは、大学院工学系研究科・航空宇宙工学専攻の宮谷聡さん、工学部システム創成学科の中村友哉さんと上西智さんの3人が集まった。Birdportには、大学院新領域創成科学研究科・社会文化環境学専攻の木村元紀さんと工学部システム創成学科のスクリット・ウィナヤウェーキンさんも参加している。
電力中継機で発電衛星小型化
最初に発表したのは、Our BOSSチーム。宇宙空間で電力を発電し、無線で地球へ送電する「宇宙太陽光発電(SSPS)」に着目した。送電方式には、雲や雨の影響を受けにくいマイクロ波を用いるものと、天候の影響は受けやすいものの、システムを小型化できるレーザー方式がある。リーダーの吉川さんによると、SSPSは100万から1000万kWの発電能力が見込めるという。
Our BOSSチームは電力中継用航空機(PRA)を組み合わせる方式を提案。レーザータイプの太陽光発電衛星から一度PRAへレーザーで送電し、PRA上でレーザーを電力に変換して、マイクロ波で地上へ送電する仕組みであれば、衛星を小型化できると説明した。
吉川さんは「太陽は万人共通の資源。日本もエネルギー大国になれるので、SSPSに注目が集まって、もっと日本での研究が進めばと思う。ファイナルラウンドの先を見たい」と、最優秀チーム選出を誓った。
ドローンでバードストライク低減
Birdportチームは、バードストライクを減らすため、空港周辺に「バードポート(人口営巣地)」の設置を提案する。メンバーの中村さんは、無人機(ドローン)を使い、鳥を人口営巣地へ誘導するプランを説明した。
群れ鳥の行動パターンが3つに分類される「ボイド・モデル」などを基に、ドローンでバードポートへ追い込むことで、バードストライク低減を図る。シミュレーションの結果、100羽の鳥を誘導するのには30機のドローンが必要になるという。ドローンは鳥の追い込みに最適化したフライトパターンで誘導することを想定している。
課題としては、空港周辺でドローンの飛行が禁止されていること。リーダーの宮谷さんは「安全性と法整備がキーになる。アイデアが良ければ法がついてくる」と期待を示した。
ライバルも注目
4月27日から始まる第3ラウンドでは、第2ラウンド進出100チームの中から5チームが選ばれ、アイデアを発表する。最優秀チームには賞金3万ユーロ(約393万円)が、2位のチームには1万5000ユーロが贈呈される。
同コンテストは、世界中の大学生を対象に開催。若者たちの想像力を伸ばし、航空輸送の常識を打ち破るアイデアの創出が狙い。2年おきに開催しており、今回で4回目。パリ航空ショーでは、上位進出した学生にライバルの機体メーカーも接触を図るほど、業界内では有望な若者を発掘するイベントとして、注目を集めている。
関連リンク
Fly Your Ideas(Airbus)
・エアバスのコンテスト、東大と早稲田が2次予選進出(15年1月12日)
・エアバス、大学生から航空輸送のアイデア募集 第4回「Fly Your Ideas」(14年6月19日)
・エアバス「Fly Your Ideas」コンテスト、最終審査に臨む5チーム決定(13年5月15日)
【お知らせ】
エアバス・ジャパンより、同社が入手した参加者名簿の漢字表記の一部に誤記があったとの連絡がありました。中村さんの正しい表記は「中村友哉」さんとのことで、表記を修正いたしました。(2015年4月6日 11:11 JST)