ANAホールディングス(9202)系列のパイロット訓練会社「パンダ・フライト・アカデミー(panda・Flight・Academy)」は2月8日、高校生向けにパイロットセミナーを開いた。
対象は日本に住んでいる高校1年生から3年生。50人の募集に対して308人の応募があり、男子37人と女子17人の計54人と保護者が参加。同社教官の現役機長が、職業としてのパイロットの魅力を語り、その後はエアバスA320型機とボーイング737-800型機のフライトシミュレーターを見学した。
講師を務めたのは、全日本空輸(ANA/NH)の濱崎隆規機長(44)。ANAでA320の機長として乗務しながら、パンダで教官を務めている。
航空大学校を卒業した濱崎機長は、「旅客機のパイロットは同じ航路を飛ぶことが多いが、天気や機体が毎回異なり、同じフライトはない。達成感が毎便、毎日ある」と、航空会社の定期便パイロットの楽しさを語った。
パイロットの仕事の楽しさを語ると同時に、濱崎機長は「ずっと勉強していかなければならない。大学入試は受かるためだが、パイロットは安全に飛ばすために勉強している」と説明。「きついことの先には、楽しいことがある」と語りかけた。
濱崎機長はパイロットに求められる条件にも言及。12時間におよぶ長距離国際線のフライトでは4時間の休憩時間に睡眠がとれるかが重要だと語った。「(仮眠室の)枕は消毒しているが、くさい」と打ち明けると、会場からは笑い声があがった。
また、現代の旅客機がオートパイロット導入で、操縦する負担が軽減されたと言われていることについて、「5、6時間座り続けているのは、想像以上に疲れる」と話した。
健康管理や食事の大切さにも触れるとともに、勤務が不規則であることなど、華やかなイメージとは違った側面も、自らの体験談を織り交ぜて語った。
講義後は、1組5人ごとに分かれて、A320や737のシミュレーターを見学。1人3分ごとに副操縦士が座る右席で、羽田空港周辺のフライトを体験した。
埼玉県から参加した高校1年生の角田聖奈さん(16)は、737のシミュレーターを体験。教官の操縦で羽田のC滑走路(34R)に進入し、ゴーアラウンド(着陸復行)を実施後、ディズニーランド上空へ旋回してフライトを終えた。
航大に進学したいという角田さんは、「737を操縦したい。これまでになりたいと思った職業で、一番長続きしている」と、目を輝かせていた。
講義を終えた濱崎機長は、生徒たちとの座談会に参加した。今回のセミナーについて、「パイロットという進路を明確にしている人と、そうでない人がいるので、話題の中心をどこに持っていくかが難しかった」と感想を語った。
今回のセミナーは、中長期的なパイロット不足に対して、国土交通省の有識者会議が昨年提言した、「若年層への関心を高めるキャンペーン・教育などの実施」を受けたもの。パンダの担当者によると、今回の反響によっては、再びセミナーを企画したいという。
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