「この会社、本当に大丈夫なのか」。側近にこう漏らしたのは国土交通大臣の太田昭宏。8月のある日、太田は「この会社」、成田国際空港会社(NAA)社長の夏目誠と会談した。スカイマーク(SKY/BC、9204)によるエアバスA380型機導入が頓挫した直後とあって、就航が立ち消えとなったことを気にかけた太田は、夏目に話題を振った。
ところが、夏目の反応は特段大事(おおごと)ではないといった様子。超大型機の就航が流れたということは、SKYが計画した路線の着陸料など関連収入がゼロになることを意味する。SKYのA380就航が幻に終わっただけではなく、SKY自体が路線再編で成田を去った。
しかし、日本の空の玄関だった成田にとっては、1社の計画頓挫はさしたる話ではない──。そうした雰囲気が漂った。NAAの危機感のなさに、太田はあっけにとられた。
一方、国交省の航空局(JCAB)は羽田空港の利便性が向上する中、成田にも自立した経営を確立するよう促している。羽田への国際線回帰が進む今、観光需要の取り込みやLCC(低コスト航空会社)を中心とするネットワーク再編など、次世代を見据えた成田のあり方を模索する。
NAAについて、JCAB幹部は「ニューヨークやロンドンへANAやJALが飛ばすのが成田、という感覚から抜けきれていない」と手厳しい。
所管する大臣が当事者の危機感のなさを懸念する中、計画当初からさまざまな不満がLCC各社から寄せられているLCCターミナルの開業日が2015年4月8日に、正式名称が第3ターミナルに決まった。総事業費は180室のホテルが建つとも言われる、180億円から200億円にのぼる。
フルサービス航空会社(FSC)とLCC、ビジネスジェットに対応する「マルチ・ファンクション・エアポート」を目指すNAA。しかし、羽田でもビジネスジェット専用施設が9月30日に開業するなど、羽田との差別化は年々難しくなっていく。
・羽田より高いLCCターミナルのPSFC
・定時運航にも悪影響?
・LCC用だからウォシュレットなし
・ありふれた時計、100万円也
・「成田縛り」見直しも
記者が日経ビジネスオンラインで毎週水曜日に連載している「天空万華鏡」の11月5日掲載分では、「羽田以上に高い空港使用料を取る成田 -成田LCCターミナルの評判が悪いワケ-」と題し、成田のLCCターミナルの問題点を取り上げた。
本記事ではLCCターミナルだけではなく、成田がこの先生き残るために改善が必要となる、NAAの問題点を取り上げる。(記事中敬称略)
羽田より高いLCCターミナルのPSFC
まずは「天空万華鏡」でも取り上げた、LCCターミナルの施設利用料(PSFC)から。
年間750万人の利用を見込むLCCターミナル開業に伴い、NAAはPSFCの徴収対象を拡大する。従来は国際線利用者からのみ徴収していたPSFCを、LCCを含む国内線利用者にも直接負担させる。
PSFCはターミナルのロビーなどの整備や維持管理費用に充てるとされる利用料。国内で最初に導入したのは、2005年4月1日から徴収を始めた羽田の国内線ターミナルを運営する日本空港ビルデング(9706)で、羽田ではロビーや動く歩道の整備などに充てられている。
成田では2015年4月8日から、LCCターミナルの国内線を利用する場合、1人1便ごとに大人380円、子供190円がかかる。国際線は、出国時が大人1020円と子供510円、乗り継ぎ時が大人510円と子供250円で、さらに旅客保安サービス料(PSSC)を大人子供共通で520円を上乗せする。
従来は直接徴収していなかった第1と第2ターミナルの国内線利用者についても、大人440円、子供220円を新たに徴収する。これらは従来航空会社が支払っていたものを、LCCターミナルに合わせる形で乗客負担に改めた。
首都圏で競合する羽田の国内線は、大人1人あたり290円。以前の1人170円を消費増税や施設拡張により、今年4月1日搭乗分から値上げしたものだ。成田のLCCターミナルは、PSFCが羽田よりも高くなってしまう。これで利用者の理解は得られるのだろうか。
NAAの担当者は「PSFCは運用コストと建設費に対して、LCCの運航計画などを基に算出した」と、コストから導き出した金額だと説明する。
羽田より高額になったのは、「羽田と成田では
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