2013年1月16日に高松空港へ緊急着陸した全日本空輸(ANA/NH)のボーイング787-8型機(登録番号JA804A)でのバッテリー発煙トラブルについて、国土交通省の運輸安全委員会(JTSB)は9月25日、調査報告書を公表した。
報告書では原因について、メインバッテリー内にある8つのセルのうち、6番セルの内部の発熱現象を起点として、同バッテリーの熱暴走が発生。発熱により膨張したセルケースとブレースバー(補強材)が接触し、アース線を介して接地短絡(ショート)したことでバッテリーボックス内に大電流が流れたとした。この結果、アーク放電が発生したことで熱の伝播を助長して熱暴走し、バッテリー損傷を拡大したとの推定までは至った。
6番セル内部での発熱現象は内部短絡によるとしたが、内部短絡が発生する仕組みを特定するには至らなかったという。
JTSBによると、FAA(米国連邦航空局)によるバッテリー開発時の試験でアース線が取り付けられておらず、航空機へ搭載した状態を適切に再現できていなかったことに問題があったとしている。また、内部短絡の影響が過小評価されたことも要因に挙げた。
JTSBでは、日本航空(JAL/JL、9201)の787-8のバッテリーがボストンで発煙した事案と、今年成田で発煙した事案も1月に起きていることから、低温も影響した可能性があるとの見方を示した。
FAAに対しては、航空機装備品を試験する際、機体に搭載した状態を適切に再現するよう、機体メーカーやサプライヤーに対して指導することなどを勧告した。また、ボーイングに対しても、設計時に想定されていないバッテリー充電器(BCU)の動作などについて、改善を図るよう求めた。
JTSBによると、バッテリー内部で金属片の混入が確認された。バッテリーを製造するジーエス・ユアサテクノロジーでは、クリーンルームを使用していることなどから、製造時ではなくセル分解時の金属片混入の可能性を示した。しかし、ボーイングが外部に委託した調査報告でも別のバッテリーで金属片が発見されており、JTSBでは、金属片混入の可能性を完全に否定することはできないとした。セル内部に金属片が混入すると、内部短絡の原因になる可能性があるという。
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【お知らせ】
6段目を加筆し、7段目を追加しました。(2014年9月25日 10:22 JST)