JAXA(宇宙航空研究開発機構)が9月18日に開催した、航空科学技術と国際競争力の強化をテーマにした発表会「JAXA航空シンポジウム2014」。午後の技術講演では航空本部のグループ長などが、実行中の取り組みや今後の展望などを発表した。
航空プログラムディレクタの大貫武氏は「国際競争力の強化に向けた取り組むべき重点課題」について発表。文部科学省が示した「戦略的次世代航空機研究開発ビジョン」の達成へ、JAXA航空本部はどのように取り組むかを示した。
現在、日本の航空機産業の世界シェアは約4%で、約1兆円規模。これを世界シェア23%の自動車産業に匹敵する20%産業へ飛躍させる。航空機産業は開発に多額の費用を要し、開発期間も10年以上かかることから民間企業のみでは新規参入が難しいため、国主導で産業育成を進めるべきとした。
シェア20%に成長させるには、研究開発や横断的な施策に取り組むべきとし、航空機の国産化に関する研究開発と大型試験設備の整備については優先的に着手すべきと提言した。
戦略ビジョンに沿った活動として、「環境技術」「安全技術」「新分野創造」の3つの柱を掲げている。
「環境技術」は、航空機開発の課題となっている二酸化炭素の排出や空港周辺の騒音などの抑制について研究。超高バイパス比エンジン技術、複合材料での軽量化や低抵抗化などの高効率化技術、脚・高揚力装置からの機体騒音の低減化技術、窒素酸化物(NOx)などの低排出化技術を開発する。
「安全技術」は、航空時事故のおもな要因となる乱気流の検知方法を研究。世界トップのレーザーレーダー(ライダー)技術をベースに、乱気流中の揺れや翼振動を抑制する突風応答・荷重軽減システム技術を開発する。
「新分野創造」は、現在よりもより速い移動方法を研究。超音速旅客機や極超音速機のほか、新たなエネルギーでの運用などを開発する。
関連リンク
JAXA航空本部
JAXA航空シンポジウム技術講演
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(2)エンジン軽量化と燃費向上で国際競争力強化へ(14年9月21日)
・航空業界発展、産官学で着手へ JAXA航空シンポジウム(14年9月18日)
・文科省、次世代旅客機を国産化 国主導で2030年実用化、課題は老朽設備(14年8月20日)
・JAXA、低ソニックブーム試験未実施 実験場気象条件で(14年8月27日)
・JAL、MRJを32機導入 植木社長「航空産業拡大に貢献したい」(14年8月28日)
・JAXA、ハイブリッド風洞ダーウィン完成 調布航空宇宙センター(13年4月18日)
【お知らせ】
サブタイトルに「技術講演(1)」を追記しました。(2014年9月21日 2:41 JST)