文部科学省が8月19日に発表した、国産の次世代旅客機構想。2030年ごろの実用化を目指して、2015年度から研究開発に着手する。現在三菱航空機が開発中のリージョナルジェット機「MRJ」に次ぐ国産旅客機が、実現に向けて動き出した。
同構想では、78席仕様と92席仕様があるMRJと同規模の100席未満のリージョナルジェット機と、ボーイング737型機やエアバスA320型機と同クラスとなる230席未満の単通路機を念頭に計画を進める。
大型化する小型機
230席未満の単通路機を見ると、737のうち現在製造中の737NG(次世代型737)シリーズは、1993年11月にサウスウエスト航空(SWA/WN)から737-700を63機受注してローンチ。737-700の座席数は1クラス149席、2クラスでは126席となる。日本で主力の737-800は座席数は1クラス189席、2クラスでは162席で、シリーズ2機目として1994年9月にローンチした。このほかに、1クラス132席の737-600(製造中止)、1クラス220席の737-900ERを揃える。
一方のA320シリーズは、1984年3月に基本型であるA320がローンチ。メーカー標準座席数は1クラス180席、2クラスで150席となる。短胴型のA318は1クラス132席、2クラス107席、同じく短胴型のA319は1クラス156席、2クラス124席、長胴型のA321は1クラス236席、2クラス185席と、4段階のラインナップになっていた。
燃油高が続く現在では、航空会社は1機あたりの座席数を増やす傾向がある。エアバスが2010年12月にローンチしたA320neoや、ボーイングが2011年8月にローンチした737 MAXといったエンジン換装型では、最小サイズの機体が1サイズ大きくなり、A320neoシリーズはA319neoが、737 MAXシリーズは737 MAX 7が最小サイズとなった。
この結果、座席数が1クラス132席のA318と737-600は、後継機が計画されていない。
隙間狙うCシリーズ
今年7月に開かれたファンボロー航空ショーでは、エアバスがLCC(低コスト航空会社)向けにA320neoの座席数を最大1クラス180席から同189席に、A321neoは同236席から同240席に増やすオプションを発表。ボーイングも737 MAX 8に200席仕様を追加した。737やA320シリーズは、1クラス180席を基準により多くの乗客を運ぶ機材として位置づけられていくことが明確になった。
ここで空白になるのが、1クラス130席から150席程度の機体だ。今回取り上げるボンバルディアのCシリーズは737-600やA318が抜けた穴を埋める小型機と言える。
Cシリーズは110席から125席のCS100、130席から160席のCS300の2機種で構成。エンジンは米プラット・アンド・ホイットニー社製GTF(ギヤード・ターボファン)エンジン「PurePower PW1500G」を搭載する。GTFエンジンは、MRJも同シリーズのPW1200Gを採用しているが、CS100は2013年9月に初飛行しており、同じGTFエンジン搭載機としては、Cシリーズが先行している。
これまでの旅客機と比べて、Cシリーズは燃費で20%、運用コストで15%の向上が図られており、二酸化炭素(CO2)排出量は20%、窒素酸化物(NOx)排出量は50%削減できるとしている。静粛性の高さや窓の大きさ、シートの幅の広さ、客室内の頭上収納スペース(オーバーヘッドビン)が大型である点なども特長。今年7月のファンボロー航空ショーでは、CS100のモックアップが展示された。
今回展示されたCシリーズのモックアップには、前方に上級クラスのシート、後方に普通席のシートが用意されていた。上級クラスは2席-2席の1列4席、普通席は3席-2席の1列5席で、普通席は個人モニターを装備した高級タイプからシートピッチを詰めるために薄型化したものまで、複数のシートを異なるシートピッチで展示していた。
Cシリーズは6月末時点で、ルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)など12顧客以上からCS100を63機、CS300を140機の計203機を受注している。
日本が次世代旅客機を開発し、販売していく上で、直接のライバルとなるのはこのCシリーズだ。ボーイングやエアバスは販売力で比較にならないだけではなく、そもそも機体のラインナップが大型化している。
数歩先を行くライバルの様子を、モックアップから見てみよう。ヘッドアップディスプレイやサイドスティックを採用したコックピットや、車いすに対応したラバトリー(化粧室)、狭い空間を有効活用したギャレー(厨房設備)など、キャビン(客室)以外にも見所のあるモックアップだ。
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