ボーイングは4月27日、787型機の改良型リチウムイオンバッテリーについて米国連邦航空局(FAA)による耐空性改善命令(AD)と国土交通省航空局(JCAB)の耐空性改善通報(TCD)が26日付で発効したことを受け、改めて新バッテリーシステムの安全性を強調した。
同社民間航空機部門バイス・プレジデント兼チーフ・プロジェクト・エンジニアのマイク・シネット氏は都内で、改善策がバッテリーのセル単位での発生防止と、不具合が生じた際の拡散防止、機体への影響防止の3段階で構成されていることを再度説明。原因として考えられる約80項目を4グループに分け、これらに対して包括的に対応できる改善策であり、バッテリー自体に問題が生じても、新たに設置した格納容器(エンクロージャー)により機体には影響を及ぼさないと語った。また、「日本のお客様に深くお詫びする」と陳謝した。
セルとバッテリーは、設計や製造工程、製造時テストを見直した。セルを絶縁テープで囲み、隣り合うセルでショートが起きないようにした。使用される絶縁体も耐熱性や絶縁性を改良し、バッテリーのフレームに蒸気の排出口を設けた。また、充電器も電圧を見直し、充電時の上限を低く設定してバッテリーへの負荷を減らし、下限を高めて過放電を防止する。
新たにバッテリーを収める格納容器と排気システムを採用し、出火要因を排除。仮に出火した場合も、燃焼が続かない構造にした。バッテリーから電解液が漏れたり熱や圧力が発生した場合は格納容器内にとどめ、煙や異臭は機外に放出する。シネット氏は格納容器について、「誤解を恐れずに言えば、あらゆる原因に対応できる」と自信を示した。
ボーイングでは300人以上のスタッフが10チームで787の改修にあたっている。17機を保有するANAホールディングス(9202)傘下の全日本空輸(ANA)によると、1機につき約40人のボーイングの作業員が24時間態勢で改修作業を行っているという。改良型バッテリーは、リチウムイオンバッテリーを製造するジーエス・ユアサ(6674)から各航空会社へ送られる。改修作業1機あたり約5日で、シネット氏は「9機の改修がほぼ完了した」と述べたが、航空会社ごとの機数の詳細は各社が発表することとしてコメントを控えた。
787をめぐっては、今回のバッテリートラブル以外にも、これまでに製造上の不具合がいくつか見つかっている。昨年2月には製造中の後部胴体で炭素繊維複合材の外板と機体フレームの間ではく離が起きる不具合が発覚。今年1月に高松空港へ緊急着陸したANAの機体(登録番号JA804A)では、バッテリートラブルとは直接関係はないものの電気配線にミスが見つかっている。こうした製造上の品質管理の問題について、シネット氏は「品質の問題は解決した」と述べた。
今回の改修を受け、ANAは28日午前に改良型バッテリーが正しく機能するかを確認する試験飛行を実施する。一方、昨年8月に初号機を受領したエチオピア航空(ETH)は、現地時間27日に運航再開後では世界初となる営業飛行を行う予定。
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ボーイング・ジャパン
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