ボーイングは2月19日、787型機の電気システムとバッテリーの資料を公開した。今後数週間にわたり同社が公開する、787で採用されているシステムを解説した資料の第1弾。トラブルが発生したメインバッテリーは通常飛行中は使用しない予備電源であることなど、名称に起因する誤解などを解こうとする意図がうかがえるとともに、787の安全性を改めて強調する内容となっている。
資料によると、787は従来機よりも多くの電力を使用するため、他のボーイング機の約4倍となる約1.5メガワットの電力を発電しているという。従来機ではエンジン1基につき1台の発電機だったが、787はエンジン1基に2台の発電機を搭載。後部の補助動力装置(APU)にも2台搭載しており、1機の787に6機の発電機を搭載しているとしている。
また、従来機ではエンジンから取り込んだ高熱・高エネルギーの空気による空圧システムをモーターなど他のシステムの動力源としていたが、787は電力に置き換えたため、空圧用のダクトやバルブ、制御装置を載せずに機体を軽量化できる。
ボーイングでは、787の開発時に行った飛行試験で、6台のうち5台の発電機を止め、1基のエンジンのみでのフライトを5時間半実施して、システムの信頼性を実証したという。
787には前部電気室に搭載されたメインバッテリーと後部電気室のAPU始動用バッテリーの2基が搭載されている。787の電気システムは電力消費量が増加したが、飛行中は発電機が発電した電力で作動しており、バッテリーは使用していないと説明している。
1月16日に高松空港で全日空機のメインバッテリーから発煙したが、同バッテリーは飛行中に電力を失うといった、現実ではほぼあり得ない緊急時に電源を移行するなど、バックアップ電源として使用する予備電源としている。また、地上では給油や牽引中のブレーキ操作などに使用するという。APU始動用バッテリーは、APUの始動に用いるほか、地上作業用の電力も供給するとしている。
また、777や747など従来機のバッテリーには、ニッケル・カドミウム(ニッカド)電池が使用されてきたが、787でリチウムイオン電池を採用した理由や利点も記載。APUの始動をはじめ、高出力が求められる点などで最適だと判断したとしており、主な利点としては、高電圧・高電流、ニッカドよりも30%軽量、小型で自動車用バッテリーとほぼ同じ大きさ、短時間で再充電可能、充電機能の向上などを挙げた。
資料では機内の配電や配線についても触れている。787は電気室が2つと従来のボーイング機より1つ多く設けられているが、機内の多くのシステムはAPU始動用バッテリーが搭載されている後部電気室(1月7日にボストンで日航機のバッテリーが発火した場所)と機内各所の配電装置により電力が供給されていると説明。配線については、787は従来機よりも電気システムを多用しているが、配線量は約112km(70マイル)と、767の約145km(90マイル)より短縮されているとしている。
ボーイングでは、6機のテスト機を使った5000時間以上の飛行試験や同等の時間をかけた地上試験を経て、米国連邦航空局(FAA)の型式証明を取得したことや、何重もの安全対策を組み入れていると安全性を強調。リチウムイオン電池についても、就航以来5万時間以上の運航の中で、日航機と全日空機でのトラブル以外は一度も起きていないと力説している。
関連リンク
787型機の電気システムについて(ボーイング・ジャパン)
787ドリームライナーのバッテリーについて(ボーイング・ジャパン)
Boeing
ボーイング・ジャパン
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