エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2013年2月6日 05:02 JST

全日空787のバッテリーでも熱暴走 運輸安全委

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 国土交通省の運輸安全委員会(JTSB)は2月5日、高松空港へ1月16日に緊急着陸した全日本空輸(ANA、9202)のボーイング787型機(登録番号JA804A)でのバッテリートラブルについて、バッテリーの温度上昇が止まらなくなる熱暴走が起きていたとする調査の進捗報告を行った。今後も分解調査などを継続し、原因究明を急ぐ。

損傷を受けたメインバッテリーと正常なAPU用バッテリー、バッテリー内のセルの位置(JTSBの資料から)

 JTSBによるとバッテリー内に8個あるセルのうち、セル3とセル6の損傷が大きいことがわかった。すべてのセルに熱による損傷が見られ、セル4とセル5を除く6つのセルは大きく膨らむなど変形し、プラス電極内部に溶断があった。中でも、セル3のプラス電極の損傷が大きかった。また、バッテリー筐体(きょうたい)のアース線が断線していた。

JAXAで撮影したメインバッテリーのCTスキャン画像を3D化したもの(JTSBの資料から)

 米国家運輸安全委員会(NTSB)が調査中の日本航空(JAL、9201)の787(登録番号JA829J)に積まれていたバッテリーも、熱暴走が起きていた。JAL機で火元となった補助動力装置(APU)用の始動用バッテリーとANA機のメインバッテリーは、8つのセルを直列接続したリチウムイオン電池を使用している。

 バッテリーに関してJTSBでは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)でバッテリーのCTスキャンを行い、製造元のジーエス・ユアサ(6674)でのセルごとのCTスキャンと分解調査や、モニタリング装置(BMU)を製造した関東航空計器での調査、英メギット傘下の米セキュラプレーン・テクノロジーが製造した充電器の調査を行った。今後は機体からバッテリーへの配線束を接続するバッテリーコンタクターなどを製造するフランスの航空宇宙電子機器メーカー、タレス・アビオニクス・エレクトリカル・システムでの調査も予定している。

 フランスでの調査のほか、バッテリーの分解調査やフライトレコーダー(DFDR)の記録解析を引き続き実施する。また、バッテリー筐体(きょうたい)のアース線が断線していた件についても、時期や原因などの調査を継続する。

損傷が激しいセル3のプラス電極(JTSBの資料から)

バッテリー筐体のアース線が断線していた件も調査継続(JTSBの資料から)

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