米国家運輸安全委員会(NTSB)は2月1日(現地時間、以下同)、1月7日にボストンで起きた日本航空(JAL、9201)のボーイング787型機(登録番号JA829J)のバッテリー火災の調査について、バッテリーの8つのセルはすべて同じ製造ロットだったと発表した。また、同型の正常品を使った検査やテストでは、今のところ異常が見つかっていないとした。
火元となった補助動力装置(APU)用の始動用バッテリーはジーエス・ユアサ(6674)が2012年9月に製造。発表によると、8つのセルはすべて同年7月製造で同一ロットのものだった。
バッテリーは当該機JA829Jへ同年10月15日に搭載され、同月19日に最初の充電が行われた。同機は12月20日にJALへ引き渡され、発火したバッテリーは引き渡し時に搭載されていたもの。
NTSBでは発火したバッテリーと同型の正常品を使用して、メリーランド州にある米海軍の研究所で検査とテストを実施した。各セルに対しての電気や質量の測定や、赤外線熱画像の撮影が行われたが、異常は記録されなかった。現在は各セルの内部を調べるため、CTスキャンが行われている。
調査チームには1月31日に米エネルギー省からバッテリーの専門家が合流。継続的なテストや検証を行うという。また、機体に搭載されていた2つのフライトレコーダー(DFDR)のデータ分析についても、電池の性能や充電システムの動作解明につながる情報がないかなど、解析を引き続き行っていく。
2月4日以降はバッテリーの正常品を使い、全セルに対してセルを傷つけない非侵襲な方法で「ソフトショート」のテストを開始する。NTSBでは、このテストでセル内の高抵抗や小規模なショートの存在が明らかになるだろうとしている。また、NTSBの調査官は発火したバッテリーから取り外したバッテリーコンタクターをフランスに持ち込む予定。バッテリーコンタクターは機体からバッテリーへの配線束を接続するもの。787のAPUバッテリーや充電システムはフランスの航空宇宙電子機器メーカー、タレス・アビオニクス・エレクトリカル・システムが製造している。
一方シアトルの調査チームは、米国連邦航空局(FAA)がボーイングで行っている787のバッテリーシステムに帯する認証プロセス見直し作業の立ち会いを続けている。
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