前回のつづき。日本航空(JAL/JL、9201)の客室乗務員の中には、地上で2年から3年ほど勤務する人もいる。地上で働くJAL客室乗務員特集の第2回目は、コーポレートブランド推進部シチズンシップグループのリードキャビンアテンダント、飯塚康子さん。2016年5月から地上勤務に就き、今年5月に空の仕事へ戻った。
飯塚さんが所属していた部署は、第1回目で登場した上松可奈子さんと同じくコーポレートブランド推進部だが、社内報を担当した上松さんとはグループが異なる。飯塚さんの仕事は、会社のCSR(企業の社会的責任)活動や航空教室の講師などが中心だった。
新卒で客室乗務員になった上松さんと異なり、飯塚さんは大学卒業後、ほかの職業を3年間経験して入社した。しかし、飯塚さんもこれまで未経験なことばかりの仕事で、異動当初は戸惑うことも多かったという。
—記事の概要—
・自分なりのやり方、2年目から
・うまく発信していくことも重要
自分なりのやり方、2年目から
「どうすれば客室乗務員になれますか」「採用面接には、どのような準備が必要ですか」──。昨夏に羽田空港で開かれた中高生を対象とした航空教室で、客室乗務員の仕事を紹介していた飯塚さん。質問タイムに入ると、女子中高生たちから質問攻めにあっていた。
JALの将来を担ってくれるかもしれない彼女たちに、飯塚さんは「面接は楽しむ気持ちを持ってほしいですね。友だちとお話しする感じのほうが、うまくいくと思います」と、アドバイスしていた。そして、華やかなイメージとは裏腹に、時差のある勤務で体力勝負であることも伝えていた。
飯塚さんの地上での仕事は、社会貢献活動が柱になる。JALは2016年11月から、次世代育成プログラム「空育(そらいく)」を進めており、ウェブサイトから航空教室の申し込みがあった学校に、飯塚さんら社員が講師役として出向く。「客室乗務員の仕事を紹介したり、学生さんのインタビューを受けるのも仕事です」と飯塚さんは話す。
また、東北や熊本などの復興支援や、地方と海外の橋渡し、社内と異業種をつなぐ役割と、仕事の内容は多岐にわたる。
このため、フライトから地上勤務に異動したばかりのころは、戸惑うこともあった。業務のひとつとして経理を受け持つことになったが、飯塚さんは未経験。「経理の勉強がすごく必要で、パソコンも初心者でした。慣れるまでは苦労が多かったですが、乗務だけでは身につかない知識が増えましたね」と、2年間を振り返った。
自分なりのやり方ができるようになったのは、2年目に入ってからだったという。「それまではひたすら、前任者がどうやっていたかを参考にしていました」と、当初は勉強に追われながらの毎日だった。
うまく発信していくことも重要
飯塚さんは接客が好きで、高校生のころから空の仕事を意識するようになった。中でも大学生の時に家族とJALに乗った際、薬を飲もうとした時のエピソードが、今の仕事を目指すきっかけになったという。
「手元に水がなかったので、客室乗務員に頼んだところ、白湯(さゆ)を出してくれました。さりげない気配りに感動しました」と、飯塚さんは話す。
しかし、地上勤務ではボランティア活動の中核となるなど、未経験の領域にも踏み込まなければならない。
社会貢献活動の中には、海外を対象にしたものもあった。利用者からチャリティーマイルを募り、インドネシアに浄水器を届けた。社内でボランティアを募集し、現地の人や一緒に活動するNPOとの調整を飯塚さんが担当した。
「小学校や孤児院に浄水器を届けました。浄水器といってもシンプルなもので、現地で生活や農業に必要とされるものを届ける活動を、JALが支援しています。現地では子供と遊んだり、ボランティアの中にパイロットがいたので、飛行機の話もしました」と、ミニ航空教室も開いた。
こうした取り組みの中には、飯塚さんが知らないものもあった。「社外との接点が多い部署で、自分がこうした活動に関われたのはうれしかったです」と振り返る。
そして、客室乗務員だからこそ感じたこともあった。
「客室乗務員は毎日パソコンを見ているわけではないので、こうしたら知ってもらえるかな、役に立つかなと、社内で知らない人にもしってもらえるよう、うまく発信して活動の理解者を増やしていくことも重要ですね」と、社内外で社会貢献活動の理解者を増やす工夫の大切さを感じた。
航空業界を目指す学生たちや、復興支援で出会った人など、フライトとは違う人との接点を通じて、飯塚さんは「より思いを感じてサービスができるようになりました」と笑った。
*最終回となる次回は、機内で使う食器などを調達する部署で奔走する、秋山恭子さんに話を聞きます。
(第3回につづく)
関連リンク
日本航空
特集・地上で働くJAL客室乗務員(全3回)
第1回 「一人でも多く社員を表紙に」社内報担当・上松可奈子さん(18年6月13日)
第3回 「CAの改善要望でもっと良いサービスを」調達担当・秋山恭子さん (18年6月30日)
過去に取材した地上勤務の客室乗務員
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