国土交通省航空局(JCAB)は8月15日、高松空港の運営委託での優先交渉権者の選定について、評価結果を公表した。高松空港は民営化後の2018年4月から、三菱地所(8802)を代表とするコンソーシアム(企業連合)が運営する。
—記事の概要—
・6団体が参加
・一次審査は「方針」
・二次審査は「計画」
・LCC拠点化で利用者拡大
・審査委員会「“空港経営”が浸透」
・運営期間は当初15年間
6団体が参加
優先交渉権者の選定は一次と二次の2段階に分け、慶應義塾大学商学部の加藤一誠教授を委員長とする審査委員会が審査。一次審査にはコンソーシアム5団体と単独企業1社の計6団体が参加し、事業方針などを採点した。このうち3団体が二次審査に進み、具体的な事業施策、事業計画を審査した。
一次審査には、清水建設(1803)を代表とする「STMJ」と、オリックス(8591)を代表とする「高松空港ORIGINALSグループ」、三菱地所を代表とする「三菱地所・大成建設・パシコングループ」、日本アジアグループ(3751)を代表とする「日本アジアレグザム丸紅グループ」、穴吹興産(8928)を代表とする「香川・四国・せとうちの未来を創るコンソーシアム」の計5コンソーシアムと、大和ハウス工業(1925)が参加した。
一次審査は「方針」
一次審査では、全体事業や設備投資、事業継続、運営権対価など方針9項目を審査。どのような方針で運営するか、空港活性化に向けた着陸料などの料金施策や路線誘致、利用者利便、地域発展への貢献、運営継続可能な収支計画、ビル施設事業者の職員に対する人事制度などを審査のポイントとした。
6団体のうち、合計点が高かった高松空港ORIGINALSグループ(43.4点)と三菱地所・大成建設・パシコングループ(36.4点)、香川・四国・せとうちの未来を創るコンソーシアム(39.6点)の3コンソーシアムが二次審査に進んだ。
二次審査は「計画」
二次審査では、将来イメージや基本コンセプト、空港活性化、設備投資など計画13項目を審査。「15年後の高松空港」への具体的イメージを提示できているか、旅客数・貨物量の目標値が積極的な数値か、機能維持への設備投資が民間の創意工夫を生かした提案が示されているか、事業計画は現実的で合理的か、などを審査のポイントとした。
この結果、高松空港ORIGINALSグループが155.5点、三菱地所・大成建設・パシコングループが164.3点、香川・四国・せとうちの未来を創るコンソーシアムが137.4点を獲得。三菱地所・大成建設・パシコングループを優先交渉権者とし、同グループと契約締結に至らなかった場合の次点交渉権者に、高松空港ORIGINALSグループを選定した。
LCC拠点化で利用者拡大
優先交渉権者となった三菱地所・大成建設・パシコングループは、「航空ネットワークの拡大」「長期の安全・安心な空港インフラ経営」「地域との協働体制」「魅力的な商業施設づくり」「利用者満足度の向上」の5つを柱に将来像を展開。LCCの拠点化や首都圏からの訪日客を呼び込むことで、15年後の2032年には旅客数を307万人、貨物量を1.7万トンとする計画を示した。
計画によると、国内線は既存の羽田路線の機材大型化や、LCCの拠点となる札幌や中部、福岡などへの新規路線などをターゲットとし、国際線は台北や上海など既存路線のデイリー(1日1往復)化のほか、タイやシンガポールなど東南アジアへの直行便などで旅客数拡大を図るとしている。
このほか、搭乗ゲートやスポット(駐機場)、駐車場の拡大でボトルネックを解消し、空港へのアクセス強化を高めることで、利便性向上につなげる。
商業施設では、制限エリア内の商業スペースを拡大することで、搭乗時刻の直前まで楽しめる空間を提供。四国・瀬戸内ブランドを発信する物販・飲食店舗も拡充する。改修後は制限エリア内の商業施設を、現在の180平方メートルから、3150平方メートルに拡張する。
審査委員会「“空港経営”が浸透」
審査委員会は、2016年8月31日から今年7月13日までの期間内に6回開催。各団体の提案内容を精査した。委員会では高松空港について、地域振興の起爆剤や、国際路線の増強に力を入れていることなどを共有した。
提案内容でも意見が交わされ、全体事業方針については、課題の捉え方や何にフォーカスしているかといった内容には差があることや、空港活性化方針と事業計画と整合しない提案もある、などの意見が出た。
また、6団体からの応募で「空港経営」が浸透してきた印象であり、この点はポジティブに評価したい、とする意見もあった。
運営期間は当初15年間
三菱地所を代表とする「三菱地所・大成建設・パシコングループ」は今後、特別目的会社(SPC)を設立し、運営にあたる。民間による運営期間は当初15年間とし、運営権者が希望した場合、35年以内の延長が可能となる。不可抗力での延長なども含め、最長で55年間。運営権者は滑走路やターミナルビル、貨物ビル、駐車場などを一体的に運営する。
現在は空港施設は国が、ターミナルビルは県や高松市、ANAホールディングス(9202)、日本航空(JAL/JL、9201)などが出資する高松空港ビルが、駐車場は空港環境整備協会が運営している。
高松空港は1958年に供用開始。滑走路は1200メートルだった。1989年には現在の場所に移転した。現在は2500メートルの滑走路1本で運用している。同時にターミナルビルの供用も開始した。
2017年夏ダイヤの国内線は、日本航空(JAL/JL、9201)が羽田便を1日7往復、全日本空輸(ANA/NH)が羽田便を1日6往復、那覇便を1日1往復、ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)が成田便を1日最大2往復運航している。
国際線は台湾のチャイナエアライン(中華航空、CAL/CI)が台北(桃園)便を週6往復、春秋航空(CQH/9C)が上海(浦東)便を週5往復。香港エクスプレス航空(HKE/UO)が香港便を週4往復、アシアナ航空(AAR/OZ)傘下のLCCエアソウル(ASV/RS)がソウル(仁川)便を週5往復運航している。
参加した6団体
・STMJ
代表企業:清水建設
コンソーシアム構成員:東京建物、三菱UFJリース、日本空港コンサルタンツ
・高松空港ORIGINALSグループ
代表企業:オリックス
コンソーシアム構成員:経営共創基盤、日本工営、日揮、綜合警備保障、高松商運(高松市)
・三菱地所・大成建設・パシコングループ
代表企業:三菱地所
コンソーシアム構成員:大成建設、パシフィックコンサルタンツ、シンボルタワー開発(高松市)
・日本アジアレグザム丸紅グループ
代表企業:日本アジアグループ
コンソーシアム構成員:レグザム、丸紅、国際航業、JAG国際エナジー
・大和ハウス工業
・香川・四国・せとうちの未来を創るコンソーシアム
代表企業:穴吹興産(高松市)
コンソーシアム構成員:穴吹ハウジングサービス(高松市)、合田工務店(高松市)、高松琴平電気鉄道(高松市)、百十四銀行(高松市)、香川銀行(高松市)、日本空港ビルデング、双日、日本政策投資銀行
関連リンク
高松空港特定運営事業(国交省)
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