米空軍は現地時間8月4日、次期大統領専用機について、ボーイングと747-8型機2機を改修する契約を結んだ。2019年に機体改修を開始し、2024年には初期運用能力を獲得できる見通し。CNNによると、2015年に破綻したロシアのトランスアエロ航空が発注したものの、引き渡されずボーイングが保管していた2機を改修する。
米空軍は2015年1月28日に、次期大統領専用機として747-8を基にした機体を導入すると発表。2016年1月29日に初契約を結んだ。米大統領専用機は、大統領搭乗時のコールサインから、「エアフォース・ワン」とも呼ばれている。
トランスアエロは、2013年12月27日に747-8の旅客型「インターコンチネンタル」を発注。ボーイングの受注リストによると、3機を発注していた。CNNによると、次期大統領専用機の改修母機として購入されるのはこのうちの2機で、試験飛行などを終え、カリフォルニア州ビクタービルにあるボーイングの施設で引き渡しを待っていた機体だという。
今後、大統領専用機としての内装や、機器増加に伴う電源系統の強化、通信機器や医療施設の設置、空港のタラップなしに乗降できるなど自機のみで地上作業に対応できる装備、自衛システム設置などの改修を実施していく。
トランプ大統領は2016年12月に、次期大統領専用機について40億ドル(約4430億円)以上の費用がかかっていると指摘。ツイッターで「発注をキャンセルする」と発言していた。米空軍は今回の契約について、元トランスアエロ機を導入することで、新造機を購入するよりもコストを抑えられるとしている。
現在の大統領専用機VC-25Aは、747-200Bを基に開発。初号機(テールナンバー28000)は1990年8月23日に、2号機(同29000)は同年12月23日に引き渡された。コールサイン「エアフォース・ワン」が最初に用いられたのは同年9月6日で、当時のジョージ・H・W・ブッシュ大統領が使用した。すでに受領から27年が経過しており、老朽化が懸念されていた。
民間航空機市場では、747-8の販売は旅客型と貨物型(747-8F)ともに低迷。ボーイングは2016年9月からは月産0.5機に生産レートを落としている。今後受注が見込めない場合、製造中止を検討する。
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U.S. Air Force
Boeing
ボーイング・ジャパン
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