奄美空港で6月5日、車いすの男性客がバニラエア(VNL/JW)の奄美発関西行きJW874便に搭乗する際、タラップの階段を自力で上っていたことが、同社への取材で28日にわかった。
バニラの奄美発着便は、成田空港と関西空港から1日1往復ずつ就航。奄美空港には搭乗橋(PBB)を備えた駐機場が1カ所しかなく、他社便がない時間帯に到着する成田便はPBBを使用しているが、関空便はPBBの使用時間が他社便と重複するため、PBBがない駐機場に入り、乗客はタラップで乗り降りしている。
バニラによると、男性客が奄美空港のカウンターで搭乗手続きをする際、複数の付き添い人がいたことから、空港の地上係員は付き添い人たちの援助があれば、タラップの階段を上がれるかを男性に確認。大丈夫だと返答を得たという。
同社では安全上の観点として、タラップでバランスを崩し、転倒するなどの危険があることから、車いすごと担いだり、抱きかかえたり、おんぶするなど、乗客自身を持ち上げる方法でタラップを利用することを制限しているという。
男性は奄美空港のカウンターで搭乗手続きをした際、自分の車いすからバニラが空港に常備している車いすに乗り換え、搭乗口へ向かった。
男性客たちがタラップ前に着いたところ、複数の付き添い人が男性客が乗ったままの車いすを担ぎ、タラップを上がろうとしたため、地上係員が制止。車いすを下りた男性はタラップの階段に座り、腕の力で上がっていった。男性が両腕を使って階段を這(は)い上がっていたことから、地上係員は男性の後を追う形になった。タラップの途中まで男性が来たところで、機内にいた客室乗務員が男性に気づき、地上係員と交代して付き添った。
バニラが就航している空港は奄美のほか、国内が成田、関空、新千歳、函館、那覇の6空港、海外が台北(桃園)、高雄、香港、ホーチミン、セブの5空港。このうち、タラップを常時使用しているのは成田発着の全便と奄美の関空便、LCCターミナルに乗り入れる那覇の全便で、那覇は機体の入口まで車いすのまま移動できる「リフトバス(パッセンジャーボーディングリフト)」が配備されているが、奄美は同様の設備がなかった。
関西-奄美線は、今年3月26日に就航。関空と奄美を結ぶ路線は1998年以来、19年ぶりの復活となった。2014年7月1日に就航した成田便は、PBBが設置された駐機場を使用しているため、車いす客の利用に大きな問題はなかったという。
今回の件を受け、バニラでは4人で運べるイス形ストレッチャーを、6月14日から導入。タラップ利用に備え、イスに座ってタラップを利用できる「可搬式階段昇降機」を、7月下旬までに導入する計画だったという。今回の件を受け、昇降機の導入を6月29日に前倒しした。
運航スケジュール(6月30日まで)
JW873 関西(12:15)→ 奄美大島(14:00)
JW874 奄美大島(14:40)→ 関西(16:05)
・バニラエア、関西-奄美大島就航 19年ぶり再開(17年3月26日)
・バニラエア、関西-奄美大島3月就航 19年ぶり復活(17年1月10日)
・バニラ石井社長「黄色い機体が奄美に映える」 成田-奄美大島線就航(14年7月1日)