エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2017年6月27日 11:58 JST

「営業利益率10%維持し成長を」JAL大西会長に聞く新路線・新機材計画

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 日本航空(JAL/JL、9201)の株主総会が6月22日に開かれた。出席者数は2年連続で1000人割れと、経営破綻で注目を集めた状態から、徐々に平穏を取り戻しているという見方もできる。

 2010年1月19日に経営破綻したJALは、国土交通省航空局(JCAB)が2012年8月10日に示した文書「日本航空への企業再生への対応について」(いわゆる8.10ペーパー)に基づき、新規の大型投資や新路線開設が、今年3月末まで監視対象になっていた。

 国による監視期間が終わった4月28日に発表した2017-20年度の中期経営計画では、規模や売上高よりも質の向上を追う計画となっていた。「成長と安定性を両立したエアライン」が、テーマのひとつだ。

 そして6月4日から6日にかけて、メキシコのカンクンで開かれたIATA(国際航空運送協会)の第73回AGM(年次総会)では、米国発着便での電子機器の機内持ち込みに対する規制強化といった、世界の航空会社が直面するテーマが議論された。

 JALの大西賢会長に、電子機器の機内持ち込み規制やJALの路線計画、ボーイング737-800型機や国内線用767の後継機問題などについて聞いた。

── IATAは電子機器の規制に対して代替案を出してきた(関連記事)。JALとしては、この問題をどうみているか。

IATAの年次総会が開かれたメキシコで当紙の取材に応じたJALの大西会長=17年6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

大西会長:IATAの案に対してノーとは言わないが、やはり安全第一だ。そうした考えの中で、代替案はないかを考えていくべきだろう。まずはIATAも「セイフティーファースト」だと言うべきだと思う。

── 今回のIATA年次総会に出席したことで、得たものはあったか。

大西会長:IATAの理事とは年2回、そうでない人とは(年次総会で)年1回会うことができ、今回も関係を深めることができた。

 エアラインの経営者として、こういうことをやってみたい、という話ができる。これだけの会社数の人と別の場で会うとなれば、2カ月、3カ月は平気でかかるだろう。それが2日間(記者注:多くの経営者は期間中の2日間のみ出席)で濃密に話ができる。

── 話し合いの中で、ワンワールドとしての提携強化などはありそうだったか。

大西会長:残念ながらワンワールドとして、(空白地帯である)中央ヨーロッパや中国、インドにはまったく手を打てていない。われわれとしては、別の道を模索する必要があるのでは、と思いはじめている。

 ワンワールドは、エアラインのアライアンス。お互いにネットワークの強化などで成長していこう、というものだ。しかし、われわれのパートナーシップは必ずしもエアラインだけではない。ご当地の旅行会社と組むのも、ひとつのやり方だと思う。

 空白地帯をワンワールドが埋めていければよいが、僕が見てきた限りでは順調ではない。そういうやり方も考えなければならないと、この1年ほど考えるようになってきた。

── 自社路線で国際線を強くしていくとすると、どこを強化していきたいか。

大西会長:日本人マーケットはわれわれが自ら飛ばすべき。いくら提携先にお願いしても、日本人マーケットは難しいものだ。

 この前までの中期経営計画(記者注:16年度までの計画)で何をしてきたかというと、営業利益率10%以上を毎年達成しようということで続け、その結果として自己資本比率がかなり良いレベルになり、財務的には健全なレベルまで来た。

 われわれにとって成長するということは、今までの路線よりも利益率の良い新路線(を開設する)というのはありえない。これまでは利益率の良い路線ばかり選んできたからだ。次の成長は、(新路線開設により)利益率が落ちること、全体を下げることに必ずなる。そのペースをどうするかが、われわれの選択だ。

 大きく出ていくと、営業利益率3%から5%の“危険水域”になってしまい、何かで波を被るとすぐに沈んでしまう。多くのエアラインがここにいる。そのレベルまで急激に拡大するかといえば、われわれはそのようなことはしない。

 ある程度のレベル、営業利益率10%をキープしながら成長するとなると、大きくバンバン出ていくことはしないということだ。1年、2年かけて、利益率が上がるマーケットに成長させていくことを繰り返していく。

 逆に言えば、営業利益率10%をキープできる成長に留める。

── 機材計画はどのように考えているか。

737-800の後継機はどうなるのか=17年4月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

大西会長:現在の中期計画は、皆さんにはコンサバティブに見えているかもしれない。機材計画の大半はリプレース(置き換え)で、例えば10機リタイアさせて、10機入れ替える。しかし、この10機のリタイアを1年延ばせば、その年は機材が10機増える。(退役計画を)延ばそうと思えば延ばせるし、ダメだと思ったらどんどん早めにリタイアさせてしまえばよい。かなりフリーハンドな機材計画になっている。

 決して導入機材を削らなくても、リタイアのスピードを変えれば、機材計画を変えられる。やろうと思えばもっと拡張できるし、縮小もできる。それを制限しているのは、先ほど言った営業利益率だ。これをどのレベルに持っていくかだ。

── 機数が多い737-800も、初期導入の機体はだいぶ年数が経過してきた。後継機は737 MAXなのか。

大西会長:恐らく次の中期計画のスタートとなる2021年のレベルで検討することになるだろう。まったくのブランニュー(新設計)の飛行機でなければ、だいたい導入の2年前から検討すれば手に入る。

 2020年までの中期計画の後半でどうするかを考え始め、2021年からスタートする中期計画で発表すれば、737の置き換えは十分できる。

── 国内線用767の後継機も同様の考え方なのか。

大西会長:基本的にはそうだ。

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