三菱航空機が開発を進めるリージョナルジェット機「MRJ」の飛行試験3号機(登録番号JA23MJ)が、6月19日から開かれた第52回パリ航空ショーに出展された。航空ショーへのMRJの実機出展は初めてで、欧州に姿を見せたのも初となった。
同社の水谷久和社長も、世界各国から機体見学に訪れる航空会社やリース会社などの関係者を連日出迎えた。
水谷社長は、三菱航空機の親会社である三菱重工業(7011)に1975年入社。名古屋誘導推進システム製作所副所長、航空宇宙事業本部の副事業本部長、防衛・宇宙ドメイン長などを歴任し、今年4月1日に現職に就いた。
航空ショー開幕前日の18日に機体を報道関係者にお披露目した際は、終始表情が硬かった水谷社長。「英語であいさつするので、ものすごく緊張した」と自嘲気味に笑う水谷社長に、パリ航空ショーを終えた感想などを聞いた。
── 三菱航空機の社長として初めて航空ショーに参加した感想は。
水谷社長:これまでは防衛宇宙部門にいたので、航空ショーへ来ると世界のOEMに出向き、いろんなディスカッションや情報共有をしていた。
今回はまったく立場が逆。いろんな方を出迎えて、こちらから説明するということが、防衛宇宙部門に在籍していた時はなかった環境だった。そこの面くらい方というか、初めての感覚が非常に強かった。
ブリーフィングの場を持たせていただくことも、防衛宇宙ではなかったので、かなり違った。
── 今回はMRJの実機を初めて出展した。どういった部分を重視して、潜在顧客に説明したのか。
水谷社長:外観を含め、我々としてはきちっとできていると思うので、まずは機体を見てください、という感じだった。コックピットにしても、パイロットの視点で見て視認性なども配慮している。
相手にもよるが、それなりの評価はいただけていると思う。
── 機体のサイズに対する反応はあったか。出展したMRJ90に対して胴体が短いMRJ70や、MRJ90よりも胴体が長く開発検討中のMRJ100Xもあるが。
水谷社長:もちろんそうした議論もあるのだが、まずは(出展した)MRJ90の機体をご覧いただいて、どういう感想を持たれるかが話の中心だった。
MRJ90の機体の出来栄えや、開発状況をご自分の目で見ていただくことはできたと思う。
── 現在飛行試験機は5機で、設計変更が進んでいる。次の飛行試験機の製造はいつごろになるのか。
水谷社長:今年の然るべき時には製造に着手しないと、われわれが目指しているデリバリースケジュール(記者注:2020年半ばの量産機納入開始)がしんどくなる可能性がある。
そういう意味では、今から秋にかけて大変重要な時期を迎えている。スケジュールをどうやってきちっとこなしていくかが重要だと思っている。
── MRJ70の開発状況はどうか。
水谷社長:MRJ90でTC(型式証明)を取得してからという位置づけなので、MRJ70が先に動き出すことはないと思っている。すべてはMRJ90の開発状況次第だ。
関連リンク
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