国土交通省と千葉県、成田市など空港周辺9市町、成田国際空港会社(NAA)による成田空港の4者協議会は6月12日、夜間飛行制限の緩和見直しや騒音区域案の設定、航空機から落下物対策などで確認書を締結することで了承した。早朝深夜帯では低騒音機のみで運航する。また、C滑走路(第3滑走路)の供用以降は滑走路2本で運用し、滑走路別に異なる運用時間を採用することで、騒音を受ける時間帯を分散させる。
—記事の概要—
・20年までに1時間後ろ倒し
・C滑走路供用後は「スライド運用」
・落下物への支援制度も
20年までに1時間後ろ倒し
A滑走路では、飛行経路下での騒音休止時間帯を6時間確保するとともに、一定区域内の家屋を対象に、寝室への内窓設置や、壁・天井に防音工事を施す。2016年9月27日の4者協議会では、午前5時から午前1時まで3時間を延長するとしていた運用時間を、午前6時から午前0時までの1時間延長とし、2020年の東京五輪・パラリンピック開催までに実施する。
現在設定する、午後10時台はA滑走路とB滑走路各10回ずつ、計20回までの便数制限は廃止する。また、午前0時から0時30分までの30分間は、「カーフュー(離発着制限)の弾力運用」の時間帯とする。B滑走路は現状どおり、午前6時から午後11時までの運用時間とし、7時間の制限時間を設ける。
C滑走路供用後は「スライド運用」
C滑走路の供用後は、滑走路別に異なる運用時間を採用する「スライド運用」を導入し、飛行経路下で6時間の静穏時間を確保する。午前5時から午後11時までの「早番」と、午前6時30分から午前0時30分までの「遅番」の運用時間に分別。北風運用の場合、A滑走路の着陸とB滑走路の離陸、C滑走路の着陸とA滑走路の離陸をグループにすることで、滑走路の南北での静穏時間を設定する。空港全体の運用時間は午前5時から午前0時30分までとする。
早番と遅番は、定期的に入れ替える。また、午前0時30分から午前1時までの30分間は、「カーフューの弾力運用」の時間帯とする。
スライド運用は英・ヒースロー空港と独・フランクフルト空港で採用している。ヒースローは2本の滑走路を対象に、午前4時30分から午前6時まで到着便で設定。フランクフルトは4本の滑走路を対象に遅番と早番を組み合わせ、静穏時間を確保している。
現在の運用時間は午前6時から午後11時まで。前倒しする午前5時台と、後ろ倒しする午後11時以降は、ボーイング787型機やエアバスA380型機など、低騒音機の運航に限定する。
NAAの夏目誠社長は、2016年9月に示した運用時間を3時間延長した“4時間案”について、「住民説明会で批判が多かった」と振り返った。今回のスライド運用案について、「6時間の静穏時間を確保した。地域の方々の生活環境や、成田空港の将来のことも考えた」と述べ、「手前味噌だが、いい提案ができた」と自信を示した。
C滑走路運用後は、前回の提案と比較し、運用時間を30分短縮。NAAでは早朝帯の発着回数を60回に、深夜帯を90回とし、それぞれ6回ずつ減少すると試算した。NAAは短縮により、深夜早朝時間帯の需要に一部応えることができなくなるとした上で、「成田空港の国際競争力を確保しながら、訪日外国人旅行者やLCC、貨物便などのニーズを取り込み、年間発着回数50万回まで成長していくことが可能」としている。
また、運用可能時間を30分短縮したことにより、騒音コンター(輪郭線)を南北に3%程度縮小した。
落下物への支援制度も
防音工事は従来のペアガラスに加え、浴室や洗面所、トイレも外郭防音工事の対象になるよう検討する。機体からの落下物が発生した場合、見舞金の支払いや損害が生じた場合に立替金の支払いなどで地域共生を図る「航空機落下物被害救済支援制度」も設定する。
成田空港は、4000メートルのA滑走路(RWY16R/34L)と2500メートルのB滑走路(RWY16L/34R)の2本で運用している。第3滑走路の建設候補地としては、B滑走路の南側周辺などが検討されている。
関連リンク
成田国際空港
成田国際空港株式会社
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