エアライン, 業績, 空港, 解説・コラム — 2017年6月1日 08:57 JST

関空、18年通期見通し非公表 山谷社長「国と民間考え方違う」

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 関西空港と伊丹空港を運営する関西エアポートが5月31日に発表した第2期の期末連結決算は、売上高が911億円、EBITDA(利払前税引前償却前営業利益)が375億円、営業利益が176億円、経常利益が119億円、純利益が78億円だった。

 関西エアポートは、2016年4月から両空港の運営を開始し、第2期は10月1日から2017年3月31日まで。2016年4月からの1年間としては、売上高が1802億円、EBITDAが769億円、営業利益が378億円、経常利益が262億円、純利益が169億円となった。

 従来運営していた新関西国際空港会社とは会計基準が異なるため、第1期と同様、関西エアポートでは対象外となった鉄道事業の売上を除外したり、資金調達構造が異なることなどを考慮。同社が比較可能な状態に調整したとする値で比べると、新関空会社の2016年3月期通期決算と比べ、売上高は実質3.2%、経常利益は同3.6%それぞれ増加したという。

17年3月期決算を発表する関西エアポートの山谷社長(左)とムノント副社長=17年5月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 関西エアポートは、オリックス(8591)と仏空港運営会社ヴァンシ・エアポートのコンソーシアム(企業連合)が2015年12月に設立。関空と伊丹の運営は、国に所有権を残したまま運営権を売却する「コンセッション方式」で関西エアポートへ委託されており、空港用地や施設は、新関空会社と関西国際空港土地保有会社が所有する。契約期間は、2015年12月15日から2060年3月31日までの44年間を予定している。

—記事の概要—
勘定科目見直しで非航空系比55.8%
最多就航便数ピーチに触れず
18年3月期予想は非公表

*国際線誘致の方針についてはこちら

勘定科目見直しで非航空系比55.8%

1月に開業した関空第2ターミナル拡張エリアの自動チェックイン機に並ぶピーチの乗客=17年1月28日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 売上高911億円のうち、着陸料や旅客サービス施設使用料(PSFC)、旅客保安サービス料(PSSC)、搭乗橋施設(PBB)使用料など航空系事業の収益は403億円で、ターミナルビル内の免税店や物販、駐車場など非航空系が508億円となった。売上比率でみると非航空系が55.8%と、本業である航空系を上回った。

 新関空会社の2016年3月期通期決算では、売上高は1846億円だった。関西エアポートでは、2017年3月期通期の売上高1802億円に、鉄道事業の売上など新関空会社の決算で含めていた104億円を積み上げ、売上高を1905億円とした上で前年度比較を算出。実質3.2%増とした。

 経常利益は262億円で、これに運営権対価226億円や鉄道事業などの損益50億円、支払利息などを加味し、調整後の経常利益を494億円とした上で新関空会社の2016年3月期通期の477億円と比較。実質3.6%増と説明した。

 関西エアポートが支払う運営権対価は、年額372億7500万円。これに44年を掛けた1兆6401億円を基に、現在価値に割り引いた1兆4405億円を無形資産の「公共施設等運営権」として計上して、44年間で均等償却する。割り引かれた1996億円は、運営権対価の支払いが進むほど減少する支払利息として、費用計上する。

 免税店など非航空系ビジネスは、4-9月期は爆買い沈静化により免税店事業が前年を割り込んだ。一方、10-3月期は円安やLCC専用となる第2ターミナル拡張部分が1月に開業したことなどで、関西エアポートによると、国際線外国人旅客数の前年比伸び率に追いついたという。

 一方、前回12月8日に発表した第1期決算では、非航空系の売上比率は6割としていた。関西エアポートは関空と伊丹で異なっていた勘定科目の統一を進め、グランドハンドリング収入など非航空系の一部を航空系に組み替えたことで、比率に変化が生じた。このため、実質的な売上比率は変わっていないと説明している。

最多就航便数ピーチに触れず

決算会見でジェットスター・ジャパンやバニラエアには触れるものの、3月に就航5周年を迎えた最多就航便数を誇るピーチには言及せず=17年3月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 関西エアポートの山谷佳之社長は、運営開始から1年間を振り返り、「民間だから予算主義を排することができた。最初に引き継いだ予算には、(1月に第2ターミナル拡張部分へ導入した)スマートレーンや新しい商業施設も入っていなかった。予算が決まっているから、では変化についていけない。今ここは必要だなと考えてお金を使っていく、民間では当たり前のことが根付き始めた」と、民間企業の価値観が根付き始めたと述べた。

 爆買い沈静化については、「(落ち込み分の)全体はカバーできていないが、民間企業らしく変化に即応できたと思う」と語った。

 また、今回の決算発表では、ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)とバニラエア(VNL/JW)の就航事例は紹介されたものの、関空を本拠地に国際線と国内線で最多便数を運航し、3月に就航5周年を迎えたピーチ・アビエーション(APJ/MM)については、一言も言及しなかった。

 「大阪がベースのエアラインは関空のピーチと伊丹のジェイエア(JAR/XM)の2社。地元がベースのエアラインは応援したいが、ピーチばかり肩入れというのは主旨じゃない」と語り、関空ベースの航空会社としての支援に言及しつつも、他社と同列の扱いを軸にしていく考えを述べた。

18年3月期予想は非公表

17年3月期決算会見に出席する関西エアポートの山谷社長(左)とムノント副社長=17年5月31日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2018年3月期通期の業績見通しは非公表とした。山谷社長は「空港を1年間やった経験として、国際紛争や疫病、災害など、私たちがコントロールできない要素があり、経営陣としてなかなか見通せない」と、公表しない理由を説明した。

 一方、国が出資する新関空会社が運営していた時代は、原則として業績予想を開示していた。羽田空港の国内線ターミナルなどを運営する日本空港ビルデング(9706)や、成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)、中部空港(セントレア)を運営する中部国際空港会社なども、2017年度の通期見通しを上場・非上場を問わず開示している。

 また、関西エアポートが運営を開始して以来、新関空会社が発表してきた夏休みなど長期休暇期間中の利用予測で、方面別の予測値の開示を拒否し続けているほか、2016年8月に「はしか」の集団感染が発生した際も、大阪府などが公表する情報と比べて、関西エアポートの発表は内容が限られていた。

 オリックス出身の山谷社長は「関西エアポートは40%をオリックス、40%をヴァンシ、20%を関西企業が出資しており、情報の透明性に誤りがあってはならない。必要なものはディスクローズしており、国と民間企業の考え方が違う。透明度を持って重要なものから開示している。国が(出資比率)100%の会社とは違う」と、新関空会社との違いを力説した。

 また、関西エアポートが新関空会社と比べて情報開示が消極的になった点について、関西エアポートや就航する航空会社、コンセッションの関係者らは異口同音に、ヴァンシの開示姿勢が影響していると指摘する。

 ヴァンシ出身のエマヌエル・ムノント副社長は、「ヴァンシが情報開示を止めているという指摘は事実と違う。関西エアポートとして必要な情報は開示している」と反論した。

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