日本航空(JAL/JL、9201)は4月18日、ビジネスジェットの運航を手掛ける仏ダッソー・ファルコン・サービス(DFS)と提携し、JALの東京-パリ線とビジネスジェットのチャーターサービスを組み合わせたサービスを始めると発表した。
5月1日午前9時30分から、JALの法人顧客を対象に販売開始。移動時間の短縮や柔軟なスケジュールが組める点、セキュリティーや秘匿性の高さを訴求していく。また、JALの新規事業としての可能性を探る。
—記事の概要—
・パリから欧米、アフリカへ
・植木社長「需要探る意味もある」
パリから欧米、アフリカへ
今回のサービスでは、利用者は羽田や成田からJALの定期便で、パリのシャルル・ド・ゴール空港へ向かう。パリ到着後は優先レーンで入国手続きを済ませ、DFSが手配したリムジンに20分ほど乗り、ビジネスジェット専用であるパリ近郊のル・ブルジェ空港へ移動。同空港から欧州域内やアフリカ、中東などへのフライトを想定している。
DFSはフランスの航空機メーカーであるダッソー・アビエーションの100%子会社で、ダッソーのビジネスジェット「Falcon(ファルコン)」を9機保有。内訳は、座席が14席とベッドが5つ(または15席と6つ)のFalcon 7Xと、12席とベッド6つ(または13席とベッド6つ)のFalcon 900EX、12席とベッド5つのFalcon 900Bの3機種が、3機ずつとなる。
航続距離は、Falcon 7Xが1万1019キロでもっとも長く、Falcon 900EXが8300キロ、Falcon 900Bが6120キロ。羽田からシャルル・ド・ゴール空港までが1万1273キロで、Falconはパリから欧米やアフリカなどの主要都市に向かえる。
ル・ブルジェ空港では、出発前に専用ラウンジや会議室を利用することもでき、機内には客室乗務員が乗務して機内食などをサービスする。機内の温度を好みにできるほか、和食の手配などにも応じる。
料金はパリを午前9時に出発し、スペインのマドリード、スイスのチューリッヒ、英国のロンドンと金融拠点を6時間で巡るモデルケースで3万6200ユーロ(約420万円)。また、パリからアフリカのコートジボワール、ナイジェリア、南アフリカ、エジプトを4日間でまわる場合は、19万8900ユーロ(約2300万円)を想定している。
いずれも7人で利用する場合で、機内食などのサービスも含まれ、ヴィンテージもののワインなど特別な飲み物や機内食を用意する場合は、追加料金がかかる。
ル・ブルジェ空港はパリ中心部から約15キロ離れた場所にあり、奇数年に世界最大規模の航空ショーであるパリ航空ショーの会場となることで有名。滑走路は1800メートルと2600メートル、3200メートルの3本あり、離陸は午後10時15分から翌朝6時まで制限があるが、着陸は24時間できる。2015年の発着回数は5万5922回だった。
植木社長「需要探る意味もある」
JALによると、日本から欧州や中東、アフリカへ向かうファーストクラスとビジネスクラスの利用者は、年間約80万人。そのうち約30万人はJAL便が就航していない「オフライン地点」が最終目的地であることから、ビジネスジェットへの乗り継ぎサービスのターゲットとした。
また、ビジネスジェットは「プライベートジェット」とも呼ばれることから、日本ではぜいたく品というイメージだが、欧米では企業がビジネスジェットを使うことが、日本ほど特別視されていない。
JALの植木義晴社長は、「ビジネスジェットのマーケットは年間1兆円規模、世界で3万機くらい運航されており、毎年4%くらい増えている」と述べ、「需要を探る意味もあり、今回の結果を受けて地域や地点を広げることも検討したい」と見通しを語った。
欧州では、ルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)を中核とするルフトハンザグループが、ビジネスジェットの運航を手掛けている。植木社長は「そこまで考えて始めたものではない」と語り、今回のサービスを進めていく中で、今後の事業展開を模索していく姿勢を示した。
JALでは、当初は法人顧客から毎月1件受注する小規模でスタートし、企業や官公庁、スポーツチームなどの法人のみならず、個人の富裕層への対象拡大も視野にサービスを展開していく。
18日の発表会では、ダッソーの最新機種であるFalcon 8Xが羽田の格納庫でお披露目された。同機は今後、DFSのサービスで利用できるようになるという。
*写真は22枚。
関連リンク
日本航空
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