エアライン, 機体, 空港, 解説・コラム — 2017年3月11日 13:50 JST

JAC、ATR42の初号機公開 地元学生デザインのハイビスカス、機内は特注ストレッチャー

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 日本エアコミューター(JAC/JC)は3月10日、4月に就航する仏ATRのターボプロップ機ATR42-600型機の初号機(登録番号JA01JC)を、本社を置く鹿児島空港で地元関係者などにお披露目した。

機体後部にハイビスカスが描かれたJACのATR42初号機を紹介する客室乗務員=17年3月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

快適性と離着陸性能がカギ

 JACは2015年6月15日、パリ航空ショーでATR42の発注を発表。2019年までに9機導入する。ATRとしては、1500機目の契約がJAC機となった。

 初号機は現地時間1月20日、仏トゥールーズで受領。21日に日本へ向けて出発し、ギリシアのイラクリオンや、エジプトのシャルムエルシェイク、バンコク、台北など7カ所を経て、26日に鹿児島へ到着した。

ATR42初号機の前に立つJACのパイロットと客室乗務員=17年3月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 座席数は1クラス48席。現在はサーブ340B型機(1クラス36席)と、ボンバルディアDHC-8-Q400型機(同74席)を、9機ずつ運航している。2019年までにサーブ340BをATR42に置き換える。サーブ340Bと比べ、座席数は1便あたり3割増える。

 JACによると、喜界島空港のように滑走路が1200メートル級の空港では、サーブ340Bは気象条件により、夏場は定員を30席に制限して運航しているという。

 JACでATR42の導入に当初から携わってきた経営企画部の福原弘之さんは、「客室の快適性と静粛性、離着陸性能の高さが導入のポイントになった」と話す。ATR42は、同じ条件でも乗客数を制限せずに運航でき、運航コストも従来機より抑えられるため、路線を維持しやすくなる。

機体後部にハイビスカスを描いたJACのATR42初号機=17年3月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

機体後部にハイビスカスを描いたJACのATR42初号機=17年3月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 初号機と2号機は、特別塗装を施す。鹿児島のタラデザイン専門学校にJACが依頼し、鹿児島県の多くの離島で「市町村の花」となっているハイビスカスを基調としたデザインが決まった。

 進行方向左側後方の大きなハイビスカスを鹿児島、左下に広がる7つのハイビスカスは、JACが就航している鹿児島県内7つの離島を表現。5本のラインは「水引」をイメージし、地域と地域、人と人を結び、過去から現在、未来へとつないでいく想いを込めた。

 機内仕様はJALグループの機体として、JALの国内線新仕様機「スカイネクスト」に準拠。黒のレザーシートに、ワインレッドのシートベルトやヘッドレストカバーを配した。シートはリクライニングでき、ひじ掛けも可動式となる、ATRのカタログモデル2種類では上位タイプの「プレステージ」を採用した。

 ATR42の初便は、4月26日の鹿児島発屋久島行きJC3741便。就航1カ月前の3月26日には、JACの格納庫で「JACフェスティバル」を開催し、ATR42の機体展示やサーブ340Bのシミュレーター見学、航空教室、ミニライブ、抽選会などが開かれる。

JACのATR42初号機の機内=17年3月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ストレッチャーとおむつ台特注

 JACは鹿児島を拠点に、屋久島や奄美群島などの離島路線を運航。福岡や伊丹などにも乗り入れている。2018年度には7年ぶりの新路線で、JAC初の沖縄県内路線となる、沖永良部経由の徳之島-那覇線を開設する。

JACが特注したATR42のストレッチャー設置スペース=17年3月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 離島を結ぶ生活路線が中心となることから、ATR42にはJACの特注仕様で、ストレッチャーを設置できるスペースを設けた。左側後方座席を前方に倒して設置し、ストレッチャーの周りはカーテンで仕切ることが出来る。

 JACによると、ストレッチャーによる病人の搬送は、年に20-30件程度あるという。従来機でもストレッチャーを運用できたが、カーテンはなく、ほかの乗客の視線が気になるという声が利用者から寄せられていた。

 後方に1つある化粧室(ラバトリー)には、おむつを替える際に使える台を設置。このおむつ台もJACの特注で、ATRの通常仕様にはない。

ラバトリーに設置された特注のおむつ台=17年3月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

訪日客呼び込む

 JACの加藤洋樹社長は、ATR42の就航で「離島の生活路線としての任務を全うしたい」と気を引き締める。

 また、環境省が7日に奄美群島を国内34カ所目の国立公園「奄美群島国立公園」に指定したことから、加藤社長は「国立公園の指定やNHK大河ドラマ『西郷(せご)どん』など、奄美には追い風の時期に就航する。国内外から観光客を呼び込みたい」と意気込みを語った。

 加藤社長によると、屋久島は欧州からの観光客が多いという。今後は、海外からもJACの航空券をインターネットで購入できる環境を整え、欧米からの訪日客を取り込みたい考えだ。

機体をデザインしたタラデザイン専門学校の隠塚敏郎校長(左から3人目)に感謝状を手渡すJACの加藤社長(同2人目)=17年3月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

お年寄り考慮しスロープ設置

 ATR就航と同時に、鹿児島をはじめ乗り入れる空港には、可動式の「ボーディング・スロープ」を配備。ATR42は搭乗橋(PBB)が使用できず、乗客が機体後方のドアから乗り降りする。

 JACが検証したところ、特にお年寄りが機体から降りる際、従来機よりも急角度になる階段が不安に感じられるとのことから、スロープの配備を決めた。

 スロープを機体に横付けすることで、車椅子を利用している人も、そのまま乗り降りできる。ボーディング・スロープを横付けする時間は、慣れると1分から1分半程度だという。

JACが導入する「ボーディング・スロープ」=17年3月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 日本でATR機を導入するのは、2016年2月20日に運航を開始した天草エアライン(AHX/MZ)に続き2社目。JACと天草は、ATR42の運航や整備で協力体制を構築していく。

 また、ATRは鹿児島空港に日本やアジア諸国を対象とした、パーツセンターを建設する。JACはサーブ340Bのシミュレーターを運用していることから、ATR42もシミュレーター導入を検討。実現すると、鹿児島空港は日本におけるATR機の整備や訓練の拠点となる。

*写真特集はこちら

JACのATR42初号機=17年3月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JACのATR42初号機=17年3月10日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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