3月1日で就航5周年を迎えるピーチ・アビエーション(APJ/MM)。片道4時間以内を基準に、国内線14路線と国際線13路線の計27路線を、18機のエアバスA320型機(1クラス180席)で運航している。
就航5周年を目前に控えた2月19日、ピーチはフライト時間が片道約5時間と、自社最長路線となる那覇-バンコク線を1日1往復で開設した。那覇空港はピーチの本拠地である関西空港に次ぐ第2拠点で、那覇発着はバンコク線開設で7路線。国内線は関西と成田、福岡の3路線、国際線は台北(桃園)と香港、ソウル(仁川)の3路線に、4都市目のバンコクが加わった。
運航スケジュールは初日の2月19日日曜日の場合、バンコク行きMM989便は那覇を午後9時45分に出発し、バンコク着は翌日午前0時40分。那覇行きMM990便は午前1時40分にバンコクを出発し、午前7時55分に那覇へ到着する。
運賃は片道9980円から4万1980円、タイバーツでは3180バーツから1万3980バーツ。機内販売では、パクチーのペーストを使ったたこ焼き「トムヤムクンたこ焼」(5個入り、750円)など、タイ料理には欠かせないパクチーを使ったメニューを3品用意し、タイの代表的なビール「シンハービール」をおつまみ付き600円で販売している。
—記事の概要—
・2便重なり混雑する保安検査場
・乗客全員にシンハービール
・那覇行きはほとんどタイ人
那覇とバンコクを結ぶLCCの路線は初で、4社ある国内LCCのバンコク就航も初めて。シートピッチが狭いLCCを使った片道5時間の旅とは、どのようなものか。那覇発バンコク行き初便に乗ってみた。
2便重なり混雑する保安検査場
初便となった2月19日の那覇発バンコク行き初便のMM989便は、定刻の午後9時45分に乗客159人と乗員6人(パイロット2人、客室乗務員4人)を乗せて出発。機材はピーチではもっとも新しい、2016年10月に引き渡された18号機(登録番号JA818P)で、バンコクには翌20日午前0時35分に到着した。
一方、バンコク発那覇行き初便は、20日午前1時50分に乗客180人(幼児1人含む)と乗員6人を乗せて出発し、那覇には午前7時53分に着いた。
私は都内に住んでいるため、羽田から那覇へ向かい、午後6時前に到着。チェックインが始まる午後7時45分までは、国内線ターミナル内で初便出発の記事を用意して時間をつぶした。
午後7時55分。国内線ターミナルのバス乗り場から、LCCターミナル行きの連絡バスが出発した。車内は満員で、大きなスーツケースを持った人も多かった。なかなかバスが発車しなかったので、「飛行機に間に合うんかいな」と不安がる男性グループもいた。
那覇空港の貨物エリアにあるLCCターミナルには、午後7時58分に到着。自動チェックイン機に向かい、Eチケットのバーコードやパスポートをスキャナーにかざすと、搭乗券がプリントアウトされてきた。預け荷物はないため、ターミナル内の様子を取材し、午後8時20分に保安検査の列に並んだ。
連絡バスが混雑していただけあり、保安検査も長蛇の列。普段は大手2社に乗る時は専用検査場が使えるため、保安検査で長時間並んだのは久しぶりだった。LCCターミナルにはピーチのほか、同じくANAホールディングス(9202)が出資するバニラエア(VNL/JW)が乗り入れており、この時は台北(桃園)行きと出発が重なっていたことで、混雑していたようだった。
午後8時50分。搭乗口前に着いた。出国手続きを含めて、30分ほどかかったことになる。国際線の保安検査場はレーンが2つあるが、この時使っていたのは1つのみ。保安検査する警備員を配置する必要があるため、混んでいるからと急に2つ目のレーンを使い始めるわけにもいかないのだろう。LCCターミナルからひっきりなしに便が出発しているわけでもないので、費用面を考えると現状が落としどころのようだ。
就航記念セレモニーは、午後9時すぎにスタートした。ピーチの遠藤哲・総合企画部長は「3年以上前から温めてきた路線」とあいさつ。ピーチは那覇を2014年7月19日に第2拠点化しており、当時すでに計画がスタートしていたようだ。
午後9時20分すぎに搭乗開始。沖縄出身の佐久川茜さんら4人の客室乗務員と遠藤部長、近藤尚樹那覇空港長が乗客をハイタッチで見送った。
乗客全員にシンハービール
バンコク行き初便のMM989便は、定刻の午後9時45分に出発。操縦は内野愛一郎機長と高武広佳副操縦士が、客室は先任客室乗務員の新倉知己さんと安藤啓輔さん、大喜多香織さん、松井冴季さんが担当した。6人は折り返しの那覇行き初便のMM990便にも乗務する。
水平飛行に入り、午後10時15分過ぎから就航を記念し、20歳以上の乗客全員にシンハービールを客室乗務員が配った。夜出発の便では、出発と同時に寝ている人を見かけることが多々あるが、この日は比較的起きている人が目に付いた。
20日午前0時をすぎると機内の照明が落とされた。バンコクまでは、あと2時間30分ほどだ。私が初便の搭乗取材をする際は、機内サービスの様子や機内食の撮影もこなさなければならない。やっと機内取材が一段落したので、機内販売のトムヤムクンたこ焼と日清カップヌードルのトムヤムクン味にありつくことができた。
カップヌードルは、普段もコンビニで買って食べているので、真新しいものではなかったが、たこ焼きは口に入れるとパクチーの味が広がる。香草やコリアンダーとも呼ばれるパクチーは、タイ料理にはなくてはならないもの。一方で、好き嫌いが大きく分かれる食材でもある。パクチーが苦手でなければ、シンハービールを片手にほおばるのも悪くないだろう。
その後もバンコクへ到着前にジュースを買ったりと、思った以上に機内でお金を使っていた。周囲を見ても比較的飲み物などを頼む人を見かけたので、夜10時前の出発だとちょうど飲み物や軽食を欲するのかもしれない。
今回の搭乗取材では、乗ってから機内の照明が暗くなるまでは、自席を離れて後方ギャレー付近に立って取材していた。このため、自席に約5時間座り続けた場合の感想は、残念ながら今回はお伝えできない。
しかし、4時間15分かかるバンコク発の復路に乗った印象を加味しても、フルサービス航空会社のエコノミークラスと比べると狭いシートピッチを、さほど苦痛に感じることはなかった。これが機内でノートパソコンを使い、ずっと原稿を書き続けるのであれば別だが、到着までほぼ寝て過ごすのであれば、安価に移動できるメリットの方が大きいと感じた。
那覇行きはほとんどタイ人
そして現地時間20日午前0時35分、バンコクのスワンナプーム国際空港へ到着した。機体を降り、折り返し便となる那覇行きMM990便の搭乗口を見ると、就航記念式典が開かれていた。
井上慎一CEO(最高経営責任者)は、「ピーチのサービスコンセプトは“空飛ぶ電車”。電車のように簡単に手続きでき、手軽な運賃で利用できる日常の乗り物を目指す」とあいさつ。フォトセッションが始まってしばらくすると、乗客が井上CEOや客室乗務員とともに、記念撮影をしていた。
MM990便の乗客を見ると、180人のほとんどがタイ人だった。現地ではピーチを使ったツアーも組まれているようで、これが定着すれば、台北路線のようにドル箱に育っていく可能性がありそうだ。
入国審査を終えて預け荷物を受け取るベルトコンベアーの付近を通ると、タイ政府観光局のスタッフが、歓迎の横断幕を持って出迎えた。那覇-バンコク線は沖縄県が訪日を期待しているが、タイ側も同様のようだ。
ピーチ最長路線となった、那覇-バンコク線。東南アジアの中核都市バンコクへ国内LCCとして一番乗りしたピーチは、経営理念「アジアの架け橋」の実現に向け、就航5周年という節目の年に新たな一歩を踏み出した。
運航スケジュール
MM989 那覇(21:20)→バンコク(翌日00:15)
MM990 バンコク(01:15)→那覇(07:30)
*MM989:日曜は25分遅発、水曜と土曜は45分遅発
*MM990:月曜は25分遅発、木曜と日曜は50分遅発
関連リンク
ピーチ・アビエーション
那覇-バンコク線関連
・ピーチ、那覇-バンコク就航 5時間の最長路線、パクチー機内食販売(17年2月19日)
・ピーチ、那覇-バンコク2月就航 井上CEO「アジアの架け橋第2段階に」(17年1月13日)
ピーチ関連
・ANAホールディングス、ピーチを子会社化 片野坂社長「独自性維持する」(17年2月24日)
・ピーチ、A320neoで片道4時間以上も 東南アジア拡大視野に(17年1月12日)
・ピーチ、A320neo導入 19年から10機、将来100機体制に(16年11月18日)
・ピーチ初便、定員下回る162人乗せ出発 “コンビニ”のように認知されるか(12年3月1日)