ANAホールディングス(ANAHD、9202)は2月24日、持分法適用会社であるLCCのピーチ・アビエーション(APJ/MM)を連結子会社化すると発表した。これまでの出資比率は38.7%だったが、残る株主2社から304億円で株式を取得し、67.0%に引き上げて子会社化する。株式取得は4月10日になる予定。
ピーチは2011年2月10日設立で、2012年3月1日に初便となる関西発札幌行きMM101便が就航した。現在の路線数は国内線14路線と国際線13路線の計27路線で、18機のエアバスA320型機(1クラス180席)で運航している。
2016年6月14日に発表した2016年3月期通期決算では、純利益が前期(15年3月期)比2.56倍の27億4400万円となり、3期連続黒字を達成。累積損失を解消した。売上高は29.1%増の479億3900万円、営業利益が2.15倍の61億8100万円、経常利益が2.98倍の47億5900万円で、営業利益率は12.9%だった。
ANAHD以外の株主は、ファーストイースタンアビエーションホールディングス(FE)と産業革新機構(INCJ)の2社。これまでの出資比率はANAHDが38.7%、FEが33.3%、INCJが28.0%だった。ANAHDが2社から株式の一部を取得後は、ANAHDが67.0%、FEが33.3%、INCJが15.1%となる。
これまでピーチとANAグループは、燃料の共同購入などを実施してきた。ANAHDの出資比率が高まることで、機材を調達する際の信用力が高まるなどの効果が期待される。
持分法適用会社であるピーチは創業以来、ANAと一定の距離を置いてきた。ANAHDの片野坂真哉社長は、「ピーチの独自性を尊重する。株主間契約でも確認し、ピーチの社員にも説明した。企業価値をもっと高めて欲しい」と述べ、子会社化をするものの、ピーチの独自性を維持していくと明言した。
また、「役員や幹部を親会社から送り込む考えはない」(片野坂社長)と、ピーチ側が望まない人事は行わないと述べた。ピーチを上場する可能性については、「パートナーは成長を楽しみたいと言っている」として、現時点で進行している話はないとした。
ピーチの井上慎一CEO(最高経営責任者)は、採用競争が激化しているパイロットについて、「ANAHDが後ろにつくことで信用力が高まる」と、採用面でもメリットが期待できると語った。
一方、井上CEOはマイレージ導入や予約システムの統合、ANA便とのコードシェアについては「やらない」と明言。これまで通り運航していく姿勢を示した。
ANAHDは、旧エアアジア・ジャパンを前身とするLCCのバニラエア(VNL/JW)も擁する。片野坂社長は「2社が切磋琢磨した方がいい」と述べ、2社のLCCを統合する考えを否定した。
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ピーチ・アビエーション
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