エアライン, 解説・コラム — 2017年2月16日 21:10 JST

ANA、新社長に平子氏 国際経験重視「パイロットになりたかった」

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 全日本空輸(ANA/NH)は2月16日、持ち株会社であるANAホールディングス(ANAHD、9202)の平子裕志取締役執行役員(59)が4月1日付で社長に就任すると発表した。篠辺修社長(64)は3月31日付で退任し、ANAHDの副会長に就く。若返りを図ることで、2020年までに計画されている羽田空港の発着枠配分に向け、収益力強化を進める。新社長以外の人事は今後発表する。

ANAの篠辺社長(左)と握手を交わす新社長に就任する平子取締役=17年2月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

篠辺社長「国際経験ある人が良い」

 平子氏は大分県大分市出身。1981年に東京大学経済学部を卒業後、ANAに入社した。レベニューマネジメント部や企画室企画部の部長を経て、2011年6月に執行役員に昇進し、営業推進本部副本部長、2012年4月からは米州室長兼ニューヨーク支店長を務めた。

ANAの新社長に就任する平子氏=17年2月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 2013年4月1日の持ち株会社制移行後は、2015年4月にANAHDの上席執行役員財務企画・IR部担当に就任。ANAの取締役執行役員経理部担当を兼務し、同年6月にANAHDの取締役に昇格した。2016年4月からは、ANAHDの財務企画・IR部に加え、施設企画部も担当している。

 家族は妻と一男一女。趣味はベートーベンやマーラー、ブルックナー、ワーグナーを中心としたクラシック音楽鑑賞。

 平子氏は少年時代を振り返り、「YS-11がデビューしたてで遊覧飛行に乗った。パイロットになりたかったが、視力の関係でなれなかった」と、ANAを志望した経緯を話した。新社長としての抱負は、「顧客満足と価値創造で、世界のリーディングエアラインになる。ANAHDと連携を取りながら、ANAの経営を率いていきたい」と述べた。

787の模型を手にするANAの篠辺社長(左)と平子取締役=17年2月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 新社長の打診があったのは、2016年12月の終わり。「突然会議が終わって呼ばれた」と平子氏は振り返り、社長就任後は「入念に職場をチェックしたい。昔ANAだったが分社化で子会社になったところもあるので、ANAブランドとしてそこにも目を向けたい」と、グループとしての一体感を高めていく姿勢を示した。

 篠辺社長は、平子氏について「私以上に、まじめにしっかりやる安心感がある」と評した。「若い世代から選んだ。スターアライアンスなど海外で他社の社長とやり取りせざるを得ない立場であり、国際線の展開やLCCとの競争もある。後継は社長就任3年目に入ってから検討を進め、できれば国際経験がある人間が良いと考えてきた」(篠辺社長)と人選の経緯を説明した。

 整備畑出身の篠辺社長に対し、平子氏は運航に近い現場系の経験が少ない。篠辺社長は「現場を大切にしたいという気持ちがあれば、ANAは生き残れると思う。(平子氏は)会社の中央も、海外支店も知っている。私も知らない部分がたくさんあったが、勤め上げることができそうだ」と期待を寄せた。

 平子氏は就任後の課題のひとつに、海外での知名度向上を挙げる。「米州室長時代、マーケティング担当に指示したのは、一過性ではない本格的なマーケティング」と述べ、「国際線の半数が外国人客になり、米国人も同じくらいになったが、北米路線はJV(共同事業)を組むユナイテッド航空(UAL/UA)のチケットも含めたものなので、ANAのチケットで乗ってもらえるようにしたい。まだまだ5合目くらいのイメージだ」と語った。

世代交代「5歳差が限界」

後継人事を説明するANAの篠辺社長=17年2月16日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 篠辺社長は、4月の社長交代について「2017年と2018年は羽田と成田の路線拡張が一段落し、次の2019年、2020年に向けて若干の踊り場になる。体制を大きく若返らせ、新しい力で次へ飛躍するには、このタイミングが良いのではないか」と述べ、羽田や成田の新たな発着枠配分を前に、新体制へ移行する狙いを語った。

 今回の社長交代で、篠辺社長はANAのポストには就かない。ANAHDの副会長ポストのみとした狙いについて、篠辺社長は「少なくとも前任者がいないほうがいい。(ANAに残り)良いアドバイスをしながらという考え方もあるが、そんなアドバイス自体がいらない。自分のリスクで考えてやるほうがいい」と、平子氏に全権を移譲する考えを述べた。

 平子氏との年齢差については、「世代交代は5歳差くらいが限界。10歳以上離れていれば自分が若い時に課長や部長の人で、本気で意見を言えない」と語った。

787「青年期に入る」

バッテリートラブル後、羽田を出発するANAの787定期便再開初便=13年6月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 一方、持ち株会社制へ移行した2013年は、篠辺社長が導入プロジェクトの責任者だったボーイング787型機がバッテリートラブルを起こし、大量欠航が発生した年でもあった。

 事業会社であるANAの社長を離れるにあたり、篠辺社長は「あれから4年。信頼性は期待してきた程度に上がってきている。767や777に追いついたかと言えば、どうやら追いついた。一方、767や777は(導入から年数が経過したことで)新しい不具合が出る領域に入ってきた。787は初期故障を終えるところに来ている」と振り返った。

 「エンジンでは昨年ご迷惑をお掛けした。エンジンはまだまだバージョンアップしていき、私たちの体制も出来てきている」(篠辺社長)とエンジンの改良に期待を寄せた。

 「整備の経験から言って、不具合があるかないかと言えば、ないわけがない。大事なのは不具合がコントロールできているかだ。人生で言うなら青年期に入る機材。まだまだ“悪さ”をするかもしれないので、ANAHDでもしっかり見ていきたい」と、今後も787の動向に関心を寄せていく意向を示した。

経歴
氏名:平子裕志(ひらこ・ゆうじ)
生年月日:1958年1月25日
出身地:大分県大分市
1981年3月 東京大学経済学部 卒業
1981年4月 全日本空輸 入社
2004年7月 東京空港支店 旅客部長
2006年4月 営業推進本部 レベニューマネジメント部長
2010年4月 企画室企画部長
2011年6月 執行役員 営業推進本部 副本部長
2012年4月 執行役員 米州室長 兼 ニューヨーク支店長
2015年4月 ANAホールディングス 上席執行役員 財務企画・IR部担当
     全日本空輸 取締役執行役員 経理部担当
2015年6月 ANAホールディングス 取締役執行役員 財務企画・IR部担当
     全日本空輸 取締役執行役員 経理部担当
2016年4月 ANAホールディングス 取締役執行役員 財務企画・IR部・施設企画部担当
     全日本空輸 取締役執行役員 経理部担当

関連リンク
全日本空輸
ANAホールディングス

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