エアバスは、シンガポールに開設した同社では世界最大規模のパイロット訓練施設を、日本の報道関係者に公開した。A350 XWB用など6基のフルフライト・シミュレーター(FFS)を設置し、年間1万人程度の訓練を見込む。現地時間2月10日に開かれた見学会には、A350を導入する日本航空(JAL/JL、9201)の関係者も参加した。
19年までにシミュレーター8基
2016年4月にオープンした訓練施設「エアバス・アジア・トレーニング・センター(AATC)」は、エアバス機全機種のタイプ・レーティング訓練(機種ごとの資格取得訓練)やリカレント訓練(再飛行訓練)ができる。エアバスが55%、シンガポール航空(SIA/SQ)が45%出資しており、投資額は1億米ドル(約113億8300万円)。広さは9250平方メートルで、シンガポール北東部のセレター空港そばにあるセレター・エアロスペース・パークに位置する。
FFSは現在6基で、A330とA350用が2基ずつ、A380とA320用が1基ずつ。2019年までにA350とA320用を1基ずつ増やし、合わせて8基で運用する。将来の需要増に備え、10基まで設置できるようにした。
移行訓練用の固定訓練機器「APT(エアバス・パイロット・トランジション)」は、2019年までに6基設置。計器類をタッチパネルで再現した訓練用コックピットで、現在はA380用やA350用など、各機材向けのAPTを稼働させている。
AATCのヤン・ラルデ・ゼネラルマネージャー(GM)によると、ボーイング機の運航資格があるパイロットの場合、移行に25日程度かかるという。エアバス機の運航資格を所有している場合は、8日間で済むと説明した。
AATCは航空会社28社と契約。JALやシンガポール航空、タイ国際航空(THA/TG)などアジア太平洋域内の航空会社のほか、フィンエアー(FIN/AY)やエチオピア航空(ETH/ET)など欧州やアフリカの航空会社も利用する。
現在はEASA(欧州航空安全局)とCAAS(シンガポール民間航空庁)から認定を受けている。CAAC(中国民用航空局)からの認定取得に向け調整が進んでいるほか、JCAB(国土交通省航空局)とも2018年から調整する。
FFSがあるトレーニング施設は現在5カ所あり、AATCは4カ所目の訓練施設として開設。このほかに仏トゥールーズと米マイアミ、中国・北京の施設が稼働しており、AATC開設後の2016年9月、メキシコシティにもオープンした。このほか、独ハンブルクとインド・バンガロールに、エンジニアリングとメンテナンスの訓練センターを設けている。
成長著しいアジア太平洋地域の航空需要
エアバスは、アジア太平洋地域の2016年から2035年までの20年間の航空需要を、年5.5%で成長すると予測し、世界の需要をけん引するとしている。また、20年間でアジアで1万3460機の新造機需要があると予測している。
域内のパイロット数は現在の6万8000人から17万6000人に拡大すると予測。必要な新規のパイロットは、退職などによる減少分があることから、23万2000人を見込んでいる。
「A350訓練拠点のハブ目指す」
ラルデGMは「AATCはアジア太平洋地域にあることが重要」と説明し、A350の訓練拠点のハブを目指すとした。A350などの双通路機はアジアで需要が高く、双通路機にフォーカスしたという。また、「シンガポールは航空会社にとって拠点のようなところ」と述べ、シンガポールに訓練施設を設置することの重要性を強調した。
シンガポール航空との共同出資について、ラルデGMは「シンガポール航空はA380を運航するほか、A350をアジアで2番目に受領した重要な顧客」とし、「早い段階からエアバス機を導入し、専門性を持っている。AATCのインストラクターにもなれる」と語った。
AATCはFFSのみを貸し出す「ドライリース」と、FFSのほか教官やカリキュラムなどをパッケージで提供する「ウェットリース」の2種類を用意する。
JALは2013年10月7日、31機のA350 XWBを確定発注。A350-900が18機、A350-1000が13機で、このほかにオプションで25機を購入する。2019年にA350-900の初号機が就航する予定で、現在保有するボーイング777型機を6年程度で置き換える。
AATC関連
・JAL767機長、A350シミュレーター体験 「コツつかめば操縦しやすい」(17年2月14日)
・エアバス、シンガポール航空と訓練センター シミュレーター8機(16年4月19日)
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JALのA350
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各社のA350特集
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