全日本空輸(ANA/NH)は2月8日、新路線の成田-メキシコシティ線に投入するボーイング787-8型機用の新エンジンを、成田空港で公開した。標高2000メートルを超えるメキシコシティ国際空港(ベニート・フアレス国際空港)では、通常のエンジンは乗客数などに制約が生じるが、気象条件によっては満席で離陸できる。
成田-メキシコシティ線は、2月15日に1日1往復で就航予定。成田を夕方、メキシコシティを深夜に出発する。座席数は3クラス169席(ビジネス46席、プレミアムエコノミー21席、エコノミー102席)となる。
新エンジンは、ANAが導入している787全機が採用している英ロールス・ロイス製トレント1000の改良型。長距離国際線用787-8のうち、4機(登録番号JA820A、JA823A、JA827A、JA828A)が新エンジン「トレント1000-L」を2基搭載する。
メキシコシティ空港の標高は2230メートルと、世界の主要空港の中でも高高度の空港で、富士山の五合目に匹敵。酸素が薄く、通常の長距離国際線用787-8のエンジンでは離陸時に燃焼効率が低下してしまうため、乗客数を定員より少なくするなど運航に制約が生じる。
トレント1000-Lは、787の長胴型で787-8よりも機体重量が重い787-9用トレント1000のハードウェアをベースに、高高度の空港での離陸に適したチューニングを施した。ANAによると、離陸時の推力が約6%上がることで、寒い時期であれば満席でもメキシコシティ空港を離陸できるという。
トレント1000-Lを搭載する787-8は、全機が以前から運航している機体。1月26日から羽田空港の格納庫で改修を順次始めた。エンジンカウルなどは従来のものを使い、コックピットのエンジン名が表示される画面には、「TRENT 1000-L」と表示される。
すでに3機の改修を終えており、成田-メキシコシティ線が就航する15日までに4機が揃う。いずれもメキシコシティ線専用ではなく、長距離国際線用787-8が就航している全路線に投入される。
ANAは2004年4月26日、ローンチカスタマーとして787を50機購入すると決定。1月末時点で標準型の787-8を36機、長胴型の787-9を44機、超長胴型となる787-10を3機の計83機を発注済み。787の発注機数としては世界最多となっている。エンジンは全機がトレント1000を採用した。
現在57機保有しており、このうち787-8が36機、787-9が21機となっている。
成田-メキシコシティ線は現在、アエロメヒコ航空(AMX/AM)が運航。日本からメキシコへの唯一の直行便で、ANAと同じく787-8(243席:ビジネス32席、エコノミー211席)を投入している。現在は週5往復運航しており、3月からは1日1往復に増便する。
日系航空会社によるメキシコ路線は、日本航空(JAL/JL、9201)が2010年1月に成田-バンクーバー-メキシコ線(週2往復)のうち、バンクーバー-メキシコ間を撤退している。
運航スケジュール
NH180 成田(16:40)→メキシコシティ(13:55)
NH179 メキシコシティ(01:00)→成田(翌日06:35)
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