エアバス, エアライン, 機体, 空港, 解説・コラム — 2017年1月13日 11:30 JST

ピーチ、那覇-バンコク2月就航 井上CEO「アジアの架け橋第2段階に」

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 2月に国内LCCでは初めてタイのバンコクへ就航するピーチ・アビエーション(APJ/MM)が現地時間1月12日、バンコクでメディア向け説明会を開いた。すでにアジア各国のLCCがひしめくバンコクで、ピーチはどのような差別化を図るのかなど、井上慎一CEO(最高経営責任者)がプレゼンテーションした。

バンコクで開かれた就航説明会でピーチポーズを取る客室乗務員=17年1月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
ブランドで差別化
乗り継ぎ苦にしない人増えた

ブランドで差別化

バンコクで現地メディアに説明するピーチの井上CEO=17年1月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ピーチは2月19日に、第2拠点とする那覇からバンコクのスワンナプーム国際空港へ1日1往復で就航する。現在はエアバスA320型機で、国際線12路線と国内線14路線の計26路線を運航しているが、那覇-バンコク線の開設により27路線に拡大。那覇とバンコクを結ぶLCCの路線は初で、4社ある国内LCCのバンコク就航も初めてだ。

 「バンコクは東南アジアの真ん中。シンガポールはバンコクより遠くなり、収益で考えるとバンコクが望ましい」。井上CEOは東南アジア初の就航地に、バンコクを選んだ理由を明かした。

 「運賃やサービスは真似できる」。井上CEOは、LCC各社が火花を散らすバンコクで、生き残りに必要な要素をこう説明する。「ジャパンクオリティ、ジャパンブランドで差別化する。“カワイイ”といった概念や、機内をきれいにすることだ」と、低価格運賃やサービスの良さだけでは、差別化は難しいと指摘する。

フォルクスワーゲンとコラボしたピーチ=16年11月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「ブランドは差別化で一番強い要素」と話す井上CEOは、2013年のタレント篠田麻里子さんとのコラボレーションや、2014年から南海電気鉄道(9044)の特急ラピートで1年間実施した特別塗装編成「ハッピーライナー」、2016年のフォルクスワーゲン グループ ジャパン(VWJ)、ケツメイシとのそれぞれのコラボ事例を説明した。

 井上CEOは、「VWJとのコラボでは、ピンク色のビートルを5台限定で機内販売したところ、1台300万円だが完売した」と、ブランディングが進んだ成果を披露した。

 また、那覇-バンコク線の就航を記念し、機内では1月からパクチーのペーストを使ったたこ焼き「トムヤムクンたこ焼(5個入り)」、タイの代表的なビール「シンハービール」、日清カップヌードルのトムヤムクン味と、タイにちなんだメニュー3品提供。機内食でも、独自色を打ち出している(関連記事)。

乗り継ぎ苦にしない人増えた

 ピーチの特徴として、利用者の比率で女性が52%、年齢別では20代から30代の男女が56%を占めることを井上CEOは説明。90%以上が個人旅行客で、ガイドブックには載っていない旅行を好む人が多いことを挙げた。

バンコクで就航説明会を開いたピーチの井上CEO(左から2人目)と客室乗務員=17年1月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

バンコクで開かれた就航説明会で現地メディアの動画撮影に応じる井上CEOと客室乗務員=17年1月12日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 現在就航している国際線は、72%が外国人客。中でも那覇-台北線は、9割以上が外国人だという。「沖縄のヘアサロンやネイルサロンなどを訪れるため、ピーチに乗ってくださる方がいる」と、自身のライフスタイルを豊かにするためにLCCを使うという、台湾や韓国で起きていることが、タイにも広がると井上CEOは期待を寄せる。

 利用者層などを問いかけた現地メディアの女性記者には、「タイの女性が、どういう消費動向をされているのかなどを研究している。ぜひ教えて欲しい」と教えを請うた。

 井上CEOによると、那覇-バンコク線の目標とする搭乗率は75%から80%。「乗り継ぎを苦にしない人が増えている」(井上CEO)と、このところの利用動向に触れ、低価格運賃で東京や大阪を何度も訪れている人は、ほかの都市を訪れたいというニーズがあるという。

 現地メディアから「日本人もタイを訪れるか」と問われると、井上CEOは「ピーチの利用者は観光名所だけが目的ではない旅をしており、関西から那覇経由で来るだろう」と応じた。

A320neo発注会見で握手を交わすピーチの井上CEO(右)とエアバスのブレジエCEO=16年11月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ピーチはA320を18機運航している。2016年11月18日には、A320の発展型であるA320neoを10機発注した。2019年4-6月期に初号機を受領し、既存機の置き換えを進める。機材数は2018年度に20機体制、2020年には35機体制を目指す。

 機材数の増加には、現地メディアから細かい質問が飛んだ。片道4時間というこれまでの就航基準を示しつつ、増機分について井上CEOは「あらゆるチャンスに対応する。もちろん東南アジアも主たるマーケットの一つだ」と応じ、バンコク以外のタイへの就航も「興味は十分ある」と、前向きな姿勢を示した(関連記事)。

 「アジアの架け橋」を経営理念に掲げるピーチ。国内LCC初のバンコク就航を「アジアの架け橋の第2ステージに入ってきた」と、井上CEOは表現する。親日家が多いと言われるタイだが、LCCにとっては激戦区でもある。「空飛ぶ電車」のピーチは、日本とタイをどう結ぶのだろうか。

運航スケジュール
MM989 那覇(21:20)→バンコク(翌日00:15)
MM990 バンコク(01:15)→那覇(07:30)
*MM989:日曜は25分遅発、水曜と土曜は45分遅発
*MM990:月曜は25分遅発、木曜と日曜は50分遅発

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ピーチ・アビエーション

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