新関西国際空港会社は10月26日、関西空港2期島に整備した低コスト航空会社(LCC)専用となる第2ターミナルを報道関係者に公開した。28日にオープンし、ピーチ・アビエーション(APJ)が国際国内の全路線で使用する。
国内初のLCC専用ターミナルは、18日に全日本空輸(ANA、9202)が那覇空港貨物ターミナル内の一部施設を旅客用に改装してオープンしているが、設計当初からLCC専用ターミナルとして建設された施設としては関空の第2ターミナルが国内で初めて。新関空会社では同ターミナルを「本格的LCCターミナル」と位置づけている。
建物は平屋で簡素化、駐機場は自走式対応
建物の延床面積は2万9680平方メートルで、一部を除き平屋建ての鉄骨造。天井に天井板を張らないなど、簡素化で建設コストを抑えた。天窓を設けることで明るさを確保したほか、照明のLED化を行い、環境にも配慮している。同ターミナルの総工費は約85億円で、建物は約37億円。新関空会社によると、これまでと同じ建て方で同規模のターミナルを建設した場合は、数百億円規模になるという。
駐機場は9スポットで、国際線用が2、国際国内共用が3、国内線用が4。9スポットのうち、8スポットはAPJが使用するエアバスA320型機などの小型機用で、1スポットはボーイング777などの大型機も駐機できる。搭乗口の番号は91番から99番までが割り当てられた。
航空機が自走で駐機場に出入りするため、牽引車によるプッシュバックは不要。乗客はターミナルから機体に徒歩で向かうため、ボーディングブリッジ(PBB)はない。また、通常は機体の重さで轍(わだち)ができることを防ぐためコンクリート舗装する部分を、アスファルト舗装で済ませた。
建物内は国際線と国内線の各ゾーンに分かれており、それぞれに商業施設も併設。着陸料収入に加えてテナント収入も確保する。ターミナル全体の店舗数は、飲食店やコンビニ、免税店など17店舗で、ATMや両替所なども設けた。初年度は10億円の売上を見込み、24時間営業の店舗も当初の2店舗から順次増やしていく考え。
免税店ではお酒のテイスティングや化粧品の試用ができる。お酒の種類は約10種類、化粧品は4種類を試すことができる。
案内表示は国際線が水色、国内線が黄緑色と色分けし、視認性を考慮した。また、ロビーやラウンジに設置されたイスは、APJのブランドイメージを考慮し、おしゃれな雰囲気のものが選ばれている。
ピーチ初の店舗もオープン
国際線と国内線の両エリア内に、APJが同社初のブランドコンセプトショップ「フーシア・バイ・ピーチ(Fuchsia by Peach)」をオープン。フーシアは深い赤とピンクの中間色で、同社のシンボルマークに使われている。
主なターゲットは若い女性で、飲料や雑貨、化粧品などを取り揃える。営業時間は午前5時半から国内線は午後8時まで、国際線は午後9時半までとなっており、年中無休。今後はオリジナル商品の拡充も行うという。
安藤社長「LCCのゲートウェイに」
新関空会社の安藤圭一社長は、第2ターミナルについて「LCC専用の本格的なターミナルは関空だと思う。APJとどういう施設が良いか議論した上で、チャンギやクアラルンプール空港の(LCCターミナル)第1世代的なものをモデルにして、中庭など日本的な要素や安らぎと快適さを取り入れた。アジアでトップクラスのものができたと思う」と語った。今後世界でもっとも成長が見込まれるアジアの航空市場の中で「関空をLCCのゲートウェイにしたい」と抱負を述べた。
那覇空港のLCCターミナルのように、シンプルさを徹底しなかった点については、「コストを下げてサービスの質が低下してもかまわないのではなく、利用者の安らぎや快適性について議論を重ねた結果、われわれとしてギリギリの水準がこのターミナルになった」と述べた。商業施設を充実させたことで、着陸料収入以外の収益源を確保できるようになり、コストをかけても採算の合う施設になるとの考えを示した。
那覇や成田と比べた際の優位性としては、2000万人の後背人口を抱える市場規模や、東京と比べてアジアに1時間近い点を挙げた。
「今年はLCC元年。日本はLCCが遅れていた」とする安藤社長は、「LCCの路線網が広がることは日本にとって非常に大事。日本が成長する原動力になる」と語った。
関連リンク
関西国際空港
ピーチ・アビエーション