バニラエア(VNL/JW)は12月25日、日系航空会社としては初めてとなるセブ直行便の運航を開始した。世界的に見ても長い部類に入る、エアバスA320型機での5時間超の運航はどのような感じなのか。機内や現地の様子はどうだったのか。私(記者)は往復とも初便に搭乗してみた。
—記事の概要—
・セブ行きは5時間15分
・台風接近により那覇で給油
・「セブ空港」はセブ島にない!?
・フィリピン出国時はペソを現金で
・セブ発初便、やや余裕あり
セブ行きは5時間15分
成田発セブ行きJW603便は、午後1時20分に出発し、午後5時35分に到着する。直線距離でおよそ3300キロを、5時間15分かけて飛行する。バニラエアの直行便のうち、最長路線となる。
機内では就航を記念したサプライズイベントを実施。初便搭乗者に対し配付する搭乗証明書に小さな番号を振り、くじ引きした。当選者は5人で、5人にバニラのブランケットなど、オリジナルグッズをプレゼントした。
客室乗務員がイベントの開始を告げると、機内はスポーツバーのような盛り上がり方を見せた。同乗した山室美緒子副社長がくじを引き、トナカイの扮装をした客室乗務員らと盛り上がった。
また、通常は機内で販売するクリームパンを、クリスマスケーキとして配付。バニラ風味のクリームがぎっしり詰まったパンで、客室乗務員は「コーヒーといっしょにどうぞ」とピーアール。パン配布中、客室乗務員は乗客との記念撮影に応じた。
パンにはバニラエアのロゴを刻印してある。パンを受け取った乗客のひとりは、「(ウニの一種の)スカシカシパンみたい」と話していた。
機内はほぼ満席で、女性の2人連れや家族連れなどが多く見られた。多くが日本人で、フィリピン人のほか、ロシア語らしき言語を話す外国人客もいた。通路を挟んで座るなど、隣り合って座れないカップルも見られた。私のような男1人はいなくもなかったが、あまり多くなかったように思われる。
機内の様子を熱心に撮影する「熱烈なファン」もいたものの、場所柄、ネクタイを着用したビジネス客は見受けられなかった。
全日本空輸(ANA/NH)の客室乗務員出身の山室副社長も「5人目の客室乗務員」として、ごみの回収などを手伝っていた。
山室副社長はセブ便について、「香港や台北と異なり、日本発の観光需要がメイン。日本発便は満席がしばらく続く」と語った。セブ発便は28日以降で満席が続くものの、一部便では空席があるようで、現地での知名度向上がカギになりそうだ。
台風接近により那覇で給油
ここまでは、よくある「初便搭乗リポート」なのだが、JW603便初便にはイレギュラーな事態が発生していた。本来は直行する予定が、那覇に着陸し給油が必要になったのだ。出発前にカウンターでアナウンスされたもので、離陸後に突然告げられたものではなかった。
当日はフィリピンに大型の台風26号が接近している関係で、通常より燃料を多く必要とするため、那覇での給油が必要になった。初便からイレギュラーが生じたものの、あわてる様子や文句を言うケースは見受けられなかった。乗客のほとんどが観光客で、ハプニングも旅の楽しみのひとつ、と捉えているのかもしれない。
那覇では全員が降機し、バスの中で給油作業が終わるのを待つ。この間乗客はバスからは一歩も出られず、作業をじっと眺めるだけだった。搭乗したまま給油する航空会社もあるが、バニラエアでは社内の規程により、全員が降機した状態で給油することを定めているという。
給油は30分程度で終了し再搭乗すると、バスに閉じ込められていたからか、トイレに駆け込む乗客が続出した。再離陸は那覇に着陸してから1時間20分後。時間が余計にかかった分、機内販売で食べ物やドリンクを買い求める乗客が多かった。セブに到着したのは、定刻から1時間59分遅れの現地時間午後7時34分だった。
「セブ空港」はセブ島にない!?
セブ島への玄関口となるマクタン・セブ空港は、そこまで大きな空港ではないので、入国審査に時間を要する。私たちが到着した時は、香港からのキャセイパシフィック航空(CPA/CX)便が到着したこともあり、人種が入り乱れて混雑していた。検疫と入国審査を終了し、税関を抜けて一般エリアに出るまでに1時間近くかかった。
実はマクタン・セブ空港は、セブ島にはない。セブ島の南東にある「マクタン島」にある。マクタン島とセブ島はそれぞれ独立した島で、2本の橋でつながっている。リゾートホテルはセブ島のほか、マクタン島にも数多く存在する。
私は今回セブ島には行かず、マクタン島で過ごすことにした。移動手段がホテルの送迎かタクシーに限られることから、ヘタに遠出しないほうが賢明だと思われたからだ。宿泊したホテルは、セブ島へ続く橋の付近にある。空港からタクシーで10分くらい。100ペソ(約235円)で到着した。
マクタン島には、後部の荷台を開放した小型の乗り合いタクシーが多く走り、人々は強引に停車させて乗車していた。若者たちはフィリピンのファストフード最大手「ジョリビー(Jollibee)」に集まり、食事や会話を楽しんでいた。道路には信号が多くなく、歩行者は自動車の流れを縫うように道路の反対側に渡っていた。
フィリピン出国時はペソを現金で
マクタン・セブ空港からの出国には注意が必要で、フィリピン・ペソを現金で所持しておく必要がある。通常、空港使用料や出国税などは、航空券を購入時に航空会社が代行して徴収する。マクタン・セブ空港の場合、現地でターミナルフィー(空港税)750ペソ(約1764円)を現金で支払う。米ドルの現金でも支払うことができるが、クレジットカードやほかの通貨は受け付けていない。
また、搭乗手続き前にセキュリティチェックを受ける必要がある。通過後にカウンターでチェックインし、空港税徴収カウンターで750ペソを支払う。付近にはATMはない。その後、別の場所でセキュリティチェックと出国審査を受ける。
調べてみると、マニラ国際空港でも同様の導線を設け、空港税を徴収しているようだ。
セブ発初便、やや余裕あり
翌26日の初便出発前、バニラは9番搭乗口で出発セレモニーを開催した。山室副社長は「バニラエアはANAホールディングス(9202)の子会社。(傘下に持つ)ANAは日本でいちばん大きな航空会社だ」とあいさつし、利用拡大をアピールした。
乗務する客室乗務員は、成田発と同じメンバーだった。セブで1泊し、成田に折り返して乗務する。その後、札幌行きにも乗務するという。
フィリピン人客の利用が多かったものの、機内はやや余裕があるように思えた。
◇ ◇ ◇
同路線はセブパシフィック航空(CEB/5J)が週4往復運航するほか、フィリピン航空(PAL/PR)が1日2往復を運航している。バニラエアはセブパシフィック航空と航空連合「バリューアライアンス」で連携し、フィリピン航空に対抗する。
セブ行きは日本人旅客らで満員に近かったが、今後はセブ周辺からの訪日客獲得が課題となりそうだ。
成田-セブ線がどのように成長するのか。バニラエアがこの先、どのようなリゾート路線を開拓するのか。また、カギになるバリューアライアンスでの連携も見守っていきたい。
個人的には初めてのフィリピン訪問で、不安よりもワクワク感のほうが大きかった。日本語を話さないフィリピン人との会話も初めてで、陽気な人が多い印象を受けた。今回はおよそ12時間の滞在。次回こそ、フィリピンのスーパーマーケットへ行って、本場のマンゴーやバナナなどを楽しみたい。
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バニラエア
Mactan Cebu International Airport
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