エアバスA380型機のプロダクト・マーケティング・ディレクターを務める同社のリシャール・カルカイエ氏は、国際航空宇宙展の開催期間中の10月11日に就航から5年を迎えたA380の現状について説明会を名古屋市内で開いた。
シンガポール航空(SIA)が2007年10月25日に初の商業運航を開始して5年。カルカイエ氏によると、SIAのA380運航便の平均ロードファクター(L/F、座席利用率)は82%で、SIA全体の平均L/Fの77.9%や国際航空運送協会(IATA)の平均L/Fである76.5%を上回った。これにより、2010年はA380が1機あたり460万ドル(約3億5880万円)の利益を創出したことになるという。また、カンタス航空(QFA)もL/Fが3%増加したとの事例を紹介した。
A380は現在20社から257機の受注を獲得。このうち、11年から現在までに33機を受注しており、スカイマーク(SKY、9204)も14年から6機導入する。引き渡し機数は9社86機で、エミレーツ航空(UAE)が25機で最も多く、SIAが19機、QFAが12機、ルフトハンザ ドイツ航空(DLH)が10機、エールフランス航空(AFR)が8機、大韓航空(KAL)が5機、中国南方航空(CSN)が4機、マレーシア航空(MAS)が2機、タイ国際航空(THA)が1機となっている。
今後20年間に世界の年間輸送成長率が4.7%となる中、長距離旅客輸送に適したA380の必要性は増していくとカルカイエ氏は指摘。11年に1日1万人以上の長距離旅客が集まる都市は42都市だが、31年までには90都市以上に増加するとした。成田をはじめとする世界の大都市空港36カ所に混雑が集中する中、一度に大量の乗客を運べるA380は空港の混雑緩和にも役立つと述べた。
A380の路線ネットワークは10月時点で76路線、32空港に就航。ロンドンのヒースロー空港など国際便の乗降客数上位20空港のうち16空港に就航している。カルカイエ氏は、成田や羽田から2500メートルの滑走路で離陸する場合、3クラス525席の乗客と10トンの貨物を搭載して太平洋横断が可能であると説明した。
また、13年からは航続距離を500海里延長するか、最大離陸重量を現在の560トンから575トンに増加するオプションにも対応。カルカイエ氏によると設計上のマージンがあるため、ウイングボックスを補強することで対応できるという。派生型としては、座席数を現在の3クラス525席から650席程度に増加する長胴型の可能性に言及したが、スケジュールは未定とした。
羽田空港へのA380の昼間時間帯乗り入れについてカルカイエ氏に訪ねると、「エアバスとしては問題ないと認識している」と応じた。国土交通省航空局(JCAB)がA380と後続機との距離を他機種よりも広く開けることを求めている点も、米国連邦航空局(FAA)がこれまでより半分の間隔での運航を認めたことから、条件緩和に期待感を示した。
日本国内路線にA380を導入すると仮定した場合に効果が見込まれる路線としては、羽田-福岡線や羽田-札幌線を挙げ、これまで日本の航空会社がボーイング747-400D型機で運航してきた路線はA380に置き換えても採算が合うとの見解を述べた。
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