国産ジェット旅客機「MRJ」を開発している三菱航空機の森本浩通社長は10月14日、東京・有明で開催中の「2016年国際航空宇宙展」(JA2016、主催:一般社団法人・日本航空宇宙工業会(SJAC)、東京ビッグサイト)で講演し、全日本空輸(ANA/NH)などを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)への量産初号機の引き渡しについて、従来どおり2018年の納入を目指す考えを示した。
「引き渡しに向けがんばっている」
森本社長は、「2018年に(国土交通省航空局〈JCAB〉の)型式証明(TC)を取得し、初号機をANAに納入する」と話し、「引き渡しに向けがんばっている」と述べた。
三菱航空機は9月末、ANAHDに対し納入遅延リスクが生じる可能性を説明していた。その際、引き渡し時期の延期については言及していなかった。三菱航空機は10月3日午前、MRJの製造を担当する親会社の三菱重工業(7011)とともに「現時点で納期変更を決定した事実はありません」との声明を発表している。
ANAHDは15機を確定発注。10機をオプションとし、最大25機を発注する。一方、32機を確定発注している日本航空(JAL/JL、9201)は、2021年から受領を予定している。三菱航空機はJALへの遅延リスクは、一連の報道後に説明した。
3号機、間もなく飛行試験
森本社長は、9月に米国にフェリーフライト(空輸)した飛行試験初号機(登録番号JA21MJ)を含む、試験機5機の進捗を発表。赤と黒のラインの初号機は、10月17日の週から米ワシントン州のモーゼスレイクで飛行試験を開始する。赤いラインの2号機(JA22MJ)は5月に初飛行し、現在までに15回飛行試験を実施している。
黒のラインの3号機(JA23MJ)は走行試験を実施し、飛行試験に間もなく投入できる見込み。初号機と同じ塗装の4号機(JA24MJ)は9月25日、初飛行に成功。現在も県営名古屋空港(小牧)で試験を続けている。
試験機は初号機から4号機までを米国に持ち込み、ANA塗装を施した5号機(JA25MJ)は国内に残り、小牧での飛行試験に投入する。
MRJはおよそ100万点の部品で構成し、多くの装備品は、欧米メーカーから提供されている。森本社長は日本の航空業界について、「MRJを契機に、日本の部品・装備品メーカーの参入を期待する」と述べた。日本の航空機産業の拡大を期待するとし、「国に航空機産業を根付かせるため、MRJを成功に導きたい」との意気込みを語った。
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三菱航空機
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