日本航空(JAL/JL、9201)は9月29日、地上係員(グランドスタッフ)が空港での接客スキルを競うコンテスト「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」の福岡代表選考会を、福岡空港内で開いた。
14人の出場者の中から、荒木愛(めぐみ)さん(32、07年入社)と野村翼さん(24、16年入社)の2人が代表に選ばれ、11月に羽田空港で開かれる全国大会に進んだ。
—記事の概要—
・優勝経験者が準備
・機内に持ち込めない風船
・パイロット訓練生の頑張り、証明したい
優勝経験者が準備
福岡空港のチェックインカウンターや搭乗口での業務は、JALの子会社JALスカイ九州が担当。JAL便のほか、海外から乗り入れる航空会社の業務も受託し、342人の地上係員が働いている。
コンテストは今回で5回目。福岡空港は2013年11月開催の第2回大会で片山佳恵(かえ)さんが、2015年11月に開かれた第4回は田島由佳里さんが優勝しており、好成績を残している。
29日に開かれた選考会は、現在は教官を兼務する片山さんら4人と、司会を務めた田島さんの5人が中心となり、8月中旬から休日返上で準備を進めてきた。
機内に持ち込めない風船
選考会では、空港内でのアナウンスと、チェックインカウンターでの接客技術が審査された。アナウンス審査は、日本語と英語の定型文を1人1分以内に読み上げるものと、天候不良などイレギュラーに対応するものの2種類。イレギュラーのアナウンス課題は、台風による遅延決定、航路混雑による遅延決定、濃霧による遅延の3つの中から選び、10分以内にアナウンス内容を作成し、3分以内に読み上げる。
接客技術を評価するロールプレイ審査では、上海へ向かうフィリピン人、風船を持った5歳児と母親、恋人同士と、設定が異なる3組の乗客役が登場。1人5分間の審査に登場する乗客役は社員が担当し、母親の言うことをなかなか聞かない子供などを熱演した。
審査には、JALの溝之上正充九州・山口地区支配人やJALスカイの中野直人社長ら社内審査員6人と、イオン九州の柴田祐司社長や大阪航空局福岡空港事務所の里見泰三空港長ら社外審査員5人があたった。
選考会の出場者は、アナウンス審査では緊張のあまり、用意したメモを持つ手が震えている人もいた。訓練用カウンターで接客するロールプレイ審査では、笑顔の中にも緊張感が見られたが、乗客役からイオンモールや来賓が訪れた伊万里市の名前が飛び出し、会場は笑いに包まれ、出場者の緊張を少しはほぐしているようだった。
ロールプレイ審査では、英語での接客や、子供が気に入っている機内には持ち込めない風船をどう扱うか、風船に書かれた「Happy Birthday」を見て子供にどう接するか、後ろに並んでいる乗客に気遣いが出来るかなどが審査されていた。また、会場に入場する際に別の係員が応対した乗客に対し、あいさつするかもチェックされていた。
パイロット訓練生の頑張り、証明したい
代表に選ばれた荒木さんは、好きな英語を活かせる仕事として、地上係員を選んだ。働き始めると仕事の魅力にはまっていったという荒木さんは、娘を保育園に通わせながら選考会に挑んだ。
「丸9年働いてきて、コンテストの予選に出られるとは思っていませんでした。今日も緊張してしまい、手の震えが止まらず、半ば諦めていました。片山さんや田島さんが優秀な成績を残していてプレッシャーもありますが、プレッシャーに勝って帰ってきたいです」とあいさつした。
地上係員は、荒木さんのように出産後も働く人もいれば、結婚や出産を機に職場を離れる人もいる。「結婚して子供が生まれてからも働ける職場。良い成績を残して、女性が働き続けられることを後輩に見せたいです」と全国大会への意気込みを話した。
もう1人の代表、野村さんはJALのパイロット訓練生として今年入社し、最初の勤務地として福岡空港に配属された。
選考会には自ら立候補した野村さんは、「訓練生はちょっと力を抜いているのではないか、どうせ訓練までの時間つぶしではないか、と思われても仕方ないと思っていました。働き始めて半年ですが、訓練生も頑張っていることを証明するには、コンテストで優勝するしかないと思い、出場しました」と立候補したきっかけを明かした。
野村さんは「特訓してくださった皆さんに感謝したいです」と、少し言葉を詰まらせながら喜びと感謝の言葉を述べた。
また、審査員特別賞に牧瀬美里(05年入社)さん、社長賞に大庭沙友理(11年入社)さんが選ばれた。
前回の第4回コンテストでは、田島さんが優勝したほか、同じ福岡空港の緒方良美さんが審査員特別賞には選ばれている。
第5回 空港サービスのプロフェッショナルコンテスト本選
・「人間らしさって何だろうと悩んだ」優勝は羽田とソウル 本選出場12人(16年12月7日)
・JALの空港接客No,1、羽田・町野さんとソウル・キムさん輝く(16年11月16日)
第4回 空港サービスのプロフェッショナルコンテスト
・JAL、空港接客No.1に福岡・田島さん 植木社長「彼女だけ気づくことがあった」(15年11月13日)
・最高の接客競った13人、福岡は優勝と特別賞 第4回JAL空港サービスコンテスト(15年11月13日)
・「心を尽くすことだけは忘れない」JAL、空港接客No.1の田島さん(15年11月14日)
第3回
・「心を伝えられる人の価値は、必ずある」 JAL植木社長の「寄り添うサービス」とは?(14年11月17日)
・アルメリアの銀バッチ胸に 3代目JAL空港サービスのプロたち(14年11月17日)
・JAL、空港接客No.1にソウル金浦・イさん 海外勢初出場で(14年11月14日)
第2回
・花言葉はおもてなし アルメリアの銀バッチ授かるJALの空港係員たち(13年11月14日)
・JAL、空港係員の接客コンテストで福岡・片山さん優勝(13年11月14日)
第1回
・実技シナリオの難易度維持に苦労 JALグランドスタッフコンテストの舞台裏(13年2月18日)
・JAL、グランドスタッフが能力競うコンテスト初開催(13年2月15日)
16年成田予選
・「空港は毎日が想定外」特集・成田空港のJAL接客No.1選ぶN-1グランプリ(16年9月7日)
・JAL、成田空港の接客No.1に2年目尾野さん 地上係員の全国大会進出(16年9月5日)